燃え盛る火の中、俺は親父と慕っていた男を刺した。
そいつは俺に、剣と、戦場で生きる術と、人を信じ過ぎてはいけないことを教えてくれた。
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死力を尽くした果てに、倒れるシドゥ。
「お終いか」
ガフは柄に手を掛け、シドゥを見下ろした。
「――或いは、と思ったンだが――じゃあな、小僧!!」
ガフは剣を振り降ろす――だが。
「――!?」
ガフに向かって、闇の波動が――。
「ッ!? 何もンだ!?」
剣で魔法を弾き飛ばし、放たれた方角をガフは見る――そこに居たのは。
「……」
「イシュガルドの異端審問官(インクイジター)だと!?」
異端審問官らしき男は、徐々につめより、応じてガフも間合いを取る。
そして、男はガフとシドゥの間に割ってはいる形になる。
「――チッ……なるほどな! お前のことを忘れていた! だが、今更お前が俺に勝てると思ってンのか!?」
「……今の貴方は、消耗している。 ただでは済むとは思えませんが」
異端審問官らしき男は、手に持った大剣を構えた。
ガフは仄かに、自分やシドゥと同じ禍々しきエーテルを感じ取る。
「……フン興が冷めた。 どうせ殺しても一銭にもならン……そいつにいっておけ、精々賞金首になるんだな、と!」
――仕事ならば、こうはいかない。
そう、ガフは言っているのだ。
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「離せ! ハラギン族が帝国に俺たちを売ったのはわかっているんだ!」
「……このガキ、何を言っている?」
「マラグルド族の一集落の出のようですが」
「おい、お前、誰に命令された?」
「母さん、角が……! 帝国兵がやったの? 母さん……!」 「あんたを尊敬していたのに……憧れていたのに……!」---------------------------------
「……」
シドゥは目を覚ました。
喉が渇いている。
目がかすんで良く見えない。
体が焼けるように熱い。
頭を抱えて起き上がる。
酷い吐き気がする。
そこは、見知った場所な気がした。
「……ここは、店なのか?」
「気がつきましたか?」
「あっ……?」
シドゥは目をこする。
「……まだ、寝ていなさい」
「マスターか……つっ……!!」
……シドゥの体は満身創痍だった。
頭は割られ、胸には穴が開き、両手は暗黒の力を酷使しすぎた影響で焼け爛れていた。
「……してやる」
「シドゥ?」
「殺してやる! 殺してやる……殺してやる……ガフッ!」 シドゥは立ち上がって、店の出口へと向かった。
「……」
マスターは、シドゥに近寄る。
「貴方には、師と会うという夢があったはず、こんなところで命を使い果たしてどうするつもりです?」
「……俺は、いい……生きている! 夢を追える! でも、殺された奴はもう喋らない、笑わない、泣かない、怒らない!!」
「シドゥ、貴方……」
「この、痛みをどうしたらいい!? 指先がチリチリする。口の中はカラカラだ。目の奥が熱いんだッ!」
「……」
怒りの炎に焼かれたシドゥにマスターは、そっと手をかざす。
「……何を、マスター……っ……?」
「スリプルです、お休み……シドゥ」
「マス……ター……」
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「ラッド、首尾はどうだ?」
「ええ……問題はありません、後は総督の思惑通り」
「ケッ物好きだぜ、ゼノス殿下も」
「発言にはお気をつけくださいガブラスさん……市民権を保証されているとはいえ我々名誉国民なぞ、あっという間に……」
「わかっている」
「いよいよ、だな」
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「――良かったなお前、生きていたのか」------------------------------
「なあ、ゲロルト」
「けっ、なんだテメェ、随分ズタボロじゃねえか」
「俺のことか、剣の事か?」
「チッ、まーた面倒くせえ仕事を持ってきやがったな」
「……そう言わないでくれよ、いいもの持ってきたんだ」
「ドマ酒か、コイツは……」
「ああ、ダチの土産でね――頼みはコイツだ」
「どれもハデにぶち壊されてるじゃねえか」
「これを全部溶かしてほしい」
「……あん?」
「折れた剣は、また打ち直すだけさ」
――紅蓮の炎に焼かれ、剣は蘇る。
憎悪と、怒り――そして敗北。
――だが、人も焼かれては蘇る。
新生の寓話にある、灰から生まれし不死鳥のように。
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「ガフ・ガブラスはいるか?」
「ちっ、撤退前だと言うのに!」
「いるかと聞いているんだ」
「だ、第XIII傭兵部隊なら、も、もう東州に!」
「そうかい……なら、新しい武具を試させてもらうぜ! ……プロテダッ!」
「ヴァンガードを! 早く……うわぁっ!」
「アラミゴ……ドマか、ククク、ハハハハハハハッ!!」
幾たび折れても――剣も人も紅蓮の炎に焼かれては蘇る。
その生が、あるかぎり。
例え、それが憎悪の炎だとしても。
その身が、本当に焼き尽くされ朽ちるまで。