【2話】
ゆっくりと肩に何かがふれてゆらゆらと揺すられる。
それに合わせてゆっくりと意識が浮上する。
――ねぇ…ちょっと…起きて。起きてったら!
ゆらゆらから
ガクンガクンと
肩に指が痛いほど食い込み
頭が前後に激しく揺すられ首が千切れそうになる。
堪らず【自分】は目を開けた
『ああもう、やっと起きてくれた。いくら疲れているかって、話している最中に寝ないでよ。』
そういって目を細めて微笑む少女―おそらくヒューラン族の は一見清楚そうに見える
が、掴まれていた肩にまだ食い込んだ指の感触が残っている。とても痛い。
自分のことも、最近のことも覚えている、だが目の前の少女に見覚えはない…と、
思うのだが頭に霞がかかったように、思い出そうとしても思い出せない。
それが酷くもどかしい
忘れてはいけなかったのに『えっ…私のこと……覚えてない、ですって?寝ぼけすぎだよ!
私は【カヤノ】、あなたの相棒の【カヤノ】だよ!もうー。
ずーっと一緒に旅してるのに何言ってるの?』
【本当にそうでしょうか?】と口から出掛かったが。
彼女が嘘をついているようにも見えず。
とりあえず彼女の話を聞くことにする。
『…で、私が前衛で、あなたが後衛、ずっとそうして旅してきたじゃない。』
私は本当に後衛だっただろうか。本来なら全然しらない人間に
こんな親しげに話しかけられたら怖いの一言なのだが、
その言葉からは確かに自分への信頼が感じられた。
黙って聞いている自分に気を良くしたのか、
カヤノはごそごそと足元の荷物から何かを取り出し机の上に勢いよく乗せた。
その衝撃でテーブルの上のカップと皿がカシャン!と微かに跳ねた。
それは一冊の本だった。
金属製の縁取りは年季の入ったものだと一目でわかるが革張りの表紙には汚れひとつない
『商業都市ウルダハ・・・そのうらぶれた裏路地で怪しげな黒ずくめの女が売っていた
「どんな願いもかなう宝のありかが書かれた本」つまり願いをかなえる本よ!どう?こんな血肉踊る冒険なかなかないでしょう?』
何て無茶苦茶な・・・それに、そんないかにも怪しすぎる女から本を買う人はなかなかいないと思う。
でも目をキラキラさせて語る彼女に、まだ、冒険者になりたてだったころの自分を思い出す。
まだ見ぬ世界、数々の強敵、珍しいアイテム・・・どこまでもいけるという開放感と
何よりも心が自由だった
なんだか不思議な気持ちだ、見ず知らずの思い出せない少女だけど、
今のところ、何か急いでいるわけでもなし。
彼女の言う『血肉踊る冒険』とやらに付き合ってあげることにした。
『さぁ! 血 肉 踊 る 大 冒 険 に 出 発 よ!』
カヤノが大興奮しながら大声で宣言するものだから、周りの視線がとても痛い。
そういって彼女は意気揚々と本を開いた。
やれやれと思いながら自分も本を覗き込む。そんなこんなで【自分】と『彼女』の旅は始まった。
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