しんせいぐみ! 幕間 著作 Miko=Te
「エリュっ!今日こそは!」
「忙しいのでパスします。」
「えーーー。」
「キルシュと行ってくればいいじゃない?」
「女子会しよーよー、じょーしーかーいー」
「まずは、キルシュを女の子として成長させるのは早急な事案よ!」
「だって、あんなに女子力高い男子なんて、見たことないよぅ。まさか、私より高いのでは?!」
「ほんとね、、、。」
男の娘として過ごすことになったキルシュであったが、一挙手一投足に隙が無い。
まさか、ここまで完璧にこなされるとは思っていなかったエリュが舌を巻いたほどであった。この年代の男の子にありがちな、、、まぁ、なんだ、、、あれだ。あれ。
『大佐、、、、性欲を持て余す。』
な。事が、まったくないキルシュは女生徒と始終一緒の学園生活を無難に送っているのであった。今度、その辺も調べてみる必要があるかなぁ?と、考えながらエイリの相手をしていると、ちょうどキルシュがやってきた。
「あ。エイリさん。こんにちわ。」
「うん、こんにちわー。」
「こんにちわ。キル。」
「はい。どうしたんですか、帰らないんですか?」
「キル!お菓子を買いに行くわよ!」
「あ。私はパスで。」
「フられた、、、ぐすん。」
「あらら、どうしたの?エイリの誘いを断るとは、めずらしいわね。」
「ええ、今日は同じクラスのケイさんに課題のクラフターを教わろうかと。」
「クラふぁーーーー?!」
「クラふぁーーって、、、エイリ。クラフターでしょ?」
「ふぁーーーー。」
「あらら、完全にダメだわこの娘。それにしても、どうしたの?いきなり。」
「少し気になることがありまして。」
「へぇ?まぁ、細かくは聞かないけど。長くかかりそうなの?」
「いえ、言うほどでは?」
「そう、じゃ。いってらっしゃい。エイリは私がかたづけておくから。」
「はい。いってきます!」
足取りも軽く走っていくキルシュ。どうしたのかしら?と、思いながらもあまりきにせずにエイリを片付けるエリュであった。
一週間後
ケイに鬼の指導を受けながら、キルの課題は実にスムーズに進んでいた。
この間、必要な装備は事前にいつのまにやら用意されていた。
そこは八組きってのクラフターであるケイの心配りである。
「どう、キル?クラフタのほうは?」
「はい。今日仕上げますので、また持ってきますね。あっちょんぶりけ!」
「あっちょぶ、、、は?」
「では!」
いったい、キルが何を言い出したのか。
よくわからないがとにかく何かクラフタで制作したものを持ってくるようだ。
害があるものでもなし、あまり気にせずにいたのだ。この時は。
数時間後
「出来ましたー。」
じゃーん。とばかりに、掲げて見せるキルシュの両手には手のひらほどの何かを模したアップリケが握られていた。
「うさ、、、ぎ?」
「惜しい!ライオンです!」
「あ、、、、そう、そそそそ、そうね。ライオンね!」
何が惜しいのかまったくわからないが、耳が長いライオン?のアップリケを持って現れたキルシュであったが、それをどうするのか深く聞かないでおいた。そこにエイリが現れた。
「あ。キル。戻ったの?」
「はい!これ、エイリさんにと思って!」
「あら、ありがとう。、、、、、ウサギ?」
「ライオンです!」
「あ、、、、そう、そそそそ、そうね。ライオンね!」
さきほどエリュが発言した、一字一句間違えることなく同じ言葉を発したエイリは、あわてて同意した。
キルシュはにこにこしながらエイリを見ている。
「え、、、ええと、これを。どうすれば?」
「あっちょんぶりけなので貼ってください!」
「何に?」
「、、、、本に?」
「貼れるんだ、、、、?」
どうやら、そこをケイに教えてもらっていたみたいだ。通常、アップリケは熱で糊面を溶かして貼り付ける。ただし、布でないとうまく張り付かない事もあり、装丁されているとはいえ紙に張り付けたものならしわくちゃになってしまう。
「はい。ケイさんにお聞きすると、接着剤というもので貼り付ければ大丈夫だそうです。」
「はぁ、、、、これ、、、貼るの?」
「はい!ぜひ!」
満面の笑みでキルシュは光すら舞い散らせながらにこやかに押し付けてきた。
そんなエイリは顔を少し引きつらせながらもしぶしぶ貼り付けるのであった。
貼り付け終わったエイリは放心したように顔を満面の能面にしながらふらふら揺れていた。
教室で貼り付けていると、そこに見回りに来たミコテが顔を出した。
「おーい。お前ら、早く帰れよー。」
「あ。ミコテだ。帰れー帰れー。」
「お前らが帰れよ、、、。なにやってるんだ?エイリ。」
そこでキルシュが顔を輝かせたまま、ミコテのほうを振り返りながら言った。
「この間もらったクラフターの課題です!余分に作ったので普段お世話になっているエイリさんにあげました!」
「ああ、あっちょんぶりけな!」
「キルに変なこと教えたのは、おまえかーーーーーー?!」
「おぐふっ!?」
話を聞きながら前後関係を見い出し、意識を取り戻したエイリは素早く立ちあがると叫びながら見事なドロップキックをミコテに見舞った。
すっ飛んでいったミコテは教室の外に飛び出した。
「はー、はー。」
「どうどう。ところでキル。なんでアップリケなんてやり始めたの?」
「あっちょんぶりけって、なんだか素敵な響きですよね!」
「ああ、、、そう。」
はじめからアップリケだと言っておけばこの事態にはならなかったのでは無いか?
完全にミコテの自業自得だということが分かったエリュは、とりあえずこの場をお開きにして、床にはりついたチョコボ馬車に轢かれたカエルのようになっているミコテをそのままに帰路についたのであった。
なお、その後エイリの本は意匠が凝らされたでこぼこした本になりましたとさ。
幕間 終劇