蛇口から出てくる水が冷たくなった。
そういえば今週はエアコンを使わなかったなと、本格的な秋の到来に思いを馳せる。
夏の間はシャワーだけで過ごしていたが、そろそろ浴槽にお湯を張るのも良いかもしれない。
石鹸の香りが残る手をタオルで拭いて、晩御飯の支度をする。
録画しておいた気象予報士が主人公のドラマを見ながら食べるのが、定番のスタイルだ。
洗濯機を回し、手早く掃除を済ませる。
一通りの雑事を終わらせると、ようやく今日がやってきた。
ゲーム機のコントローラーを手に取り、電源を入れる。
テレビに表示されたメニューから「FINAL FANTASY 14」を選ぶと、見慣れたタイトル画面を流れ始めた。
スマートフォンを取り出しワンタイムパスワードを表示させる。
ログイン画面を通り抜けると、ほどなくして砂時計亭のベッドで目覚める"僕"が現れた。
ここから寝るまでが、僕の一日だ。
世界を救おうと剣を振るときもあれば、初めて訪れた景色に心を打たれ眺めるときもある。
街で始まったお祭りに飛び込んでもいいし、船に乗って釣りに興じてもいい。
水の冷たさこそ肌で感じることはできないものの、傘をささずに駆け回るのはこの場所くらいだ。
それに、夏の終わりはここでだって感じることができる。
紅蓮祭と新生祭が終わり、街から花火をみることもなくなった。
ミィケット野外音楽堂もお祭りの飾り付けが取り外され、すっかり元通りだ。
ゴールドソーサーは今年二度目の活気を見せているけれど、国王の車を手に入れた人が増えればいつもの調子を取り戻すだろう。
夏は、終わる。
夏の熱気を握りしめていた九月が立ち去り、休むまもなく十月が駆け抜けていく。
そして、世界中の光の戦士たちが待ち望んでいる十一月がやってくるのだ。
託された希望の輝きで、終末から世界を救う。
そんな秋が、まもなく。