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【世界観考察】異教信仰の視点から読み解くイル・メグの価値観と物語の真意

公開
◆はじめに~なんとなく書こうと思ったきっかけ~

のっけからFF14に関係なくて恐縮ですが、動画配信サービスに登場した直後くらいに例の大人気オカルトホラー映画、ミッドサマーをようやく鑑賞したんですよ。
※この文章の初回編集日時は2021年10月13日。
 ミッドサマーが各種サブスクで配信開始したのは同年9月9日でした!時間かかりすぎ!


ホラー映画は苦手なんですが、こればっかりは劇場で観に行かなかったのを後悔したくらい出来がよくて、後にパンフレットも探して購入しました。
ホラー映画とは云うものの現代文化とのねじれを端的に示したゴアグロ表現もエッセンス程度だし、アリ・アスター作品は元々ジャンプスケアが大変控えめなので(ホラー初心者にも安心・安全・そこそこ優しい!)、異教信仰(早い話が現代都市社会とは異なる大手宗教が流入する以前の信仰文化)についての研究と解釈が非常に良心的でヨーロッパの田舎らしさがこうした信仰の視点から描かれた作品を観れたという点でとても貴重な作品だなー、と思いました。

後にウィッカーマン原版も見ましたが、イギリスらしい寒々しい景色のなかに流れる牧歌的かつファニーな空気が気に入りました。ハラハラする展開こそあれどゴアグロ要素はほぼ皆無なので「ミッドサマーなんか怖すぎて無理だよ!」というひとにはウィッカーマン原版を強く勧めたいです。間違ってもニコラス・ケイジ版じゃないぞ!
あと、完全な余談ですが、無人島開拓のおしゃれ装備・サマーアイルシリーズの名称ってウィッカーマンの舞台である架空の島の名前(その名もずばりサマーアイル島)に由来するのを後から知りました。いちいちネタに年季が入ってるあたり、開発陣の年齢層を感じますねえ……。

*

で、思い返せばメインクエストのイル・メグ編は随所にケルト文化(神話由来や民間信仰、魔術など)のエッセンスが随所に盛り込まれていてちょっと掘り起こせば宝の山と言わんばかりに面白い要素がてんこもりだったのでこれは興味深いなと感じたんですが、ロドスト内で神話や現代魔術的な視点から指摘した記事が探してもあまり見当たらなかったのでいっそのこと自分でしたためてしまおうと思った次第です。
ちなみに、この記事を書くにあたりピクシーの友好部族クエストも誓約まで進行させたんですがメインクエストに言及されていた以上の有用な情報がなかったので基本的に出典は漆黒メインクエを中心に採用しています。なんだったんだあの蛇足ストーリーは…

出来る限り出典は抑えたつもりですが、何分素人仕事でありますのでボロや抜けが多いかもしれませんが「へ~こういう考え方もあンのネ」くらいの温度感で見てやってください。

※この記事は各種ネタバレがあります。
漆黒5.0・暁月6.0メインクエスト及びピクシー部族クエストをクリアしてない場合はご注意の上、ご覧ください。

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異教信仰の視点から読み解く
イル・メグ妖精族の価値観と物語の真意


【目次】
①イル・メグの名前の由来から読み解く文化的地域性
②老いた存在ティターニアと逡巡された棄老の儀式
③「二つに一つ」ではなく「二つで一つ」
④リェー・ギア城の宝はなぜ「四つ」だったのか
⑤ティターニア討伐のほんとうの意義
★おまけ
★参考出典



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①イル・メグの名前の由来から読み解く文化的地域性

ずばり、イル・メグの名前は綴りから察するにゲール語が由来でしょう。

 ※ゲール語
 ケルト文化圏の言語。
 アイルランドでは文化保護の観点から第一公用語とされている。
 同国のニューエイジ系歌手・エンヤが使う事でも知られる。



イル・メグのアルファベット表記はIl Mhegなのでここから分解して考えると…

・il…接頭辞multiに相当、「あらゆる」、「様々な」
※例:Ildánach、「諸芸の達人」の意。ケルト神話の太陽神ルーの異名。
・mheg…「喜び」の意?
※ケルト神話における妖精の国・ティルナノーグの別名「喜びヶ原(メグ・メル)」から推察。
 (mellが名詞plainに相当、「国」「原」の意)

漆黒クエ劇中だと「メグ」を「国」「園」としているのは誤訳なんでは…
いやここで指摘するのはやめよう……

以上よりゲール語として直訳すると「あらゆる喜び」というところでしょうか。
作中ではilは「虹」との意味に置き換えられていましたが「虹色のようにあらゆるものが在る楽園」と考えてもいいかもしれません。

「謳い、喜べ……虹の国は常若なり」
(漆黒メインクエ「アクトラ・オルワ・イン」より)


また、フェオちゃんのティターニア即位時の口上にて「常若」という単語が出てきましたが、ケルト神話の妖精の国・ティルナノーグの名前には「常若の国」という意味があります。
ケルト神話の妖精の国は海の向こう、或いは地下に存在すると云われていますが、同時に戦いに敗れた亡くなった妖精たちが行き着くとされている場所でもあるので、他次元≒死後の世界とみなすこともあります。
ここから察するに、イル・メグはその名前の原義と呼び名からも第一世界のなかでも特に浮世離れした最も死後に近い地域であるとも読み取れます。

実際にメインクエスト中に探索している際にもすぐに人間を草人に変異させるなどして命を軽々しく扱う様には肝が冷えましたが、それはさながら仏教における地獄の獄卒のようであり、しかし反面では義に厚いという点では「こころ」を重んじる神秘性の高い存在としての表現かもしれません。

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②老いた存在ティターニアと逡巡された棄老の儀式

「我らが王は、イル・メグを襲撃しに来た
 大罪喰いと戦って、
 それを倒した……倒してしまったの。
 それによって放たれた光がティターニア様を侵し、
 新たなる大罪喰いに変えてしまった……。」
(漆黒メインクエ「封印の鍵」より )


イル・メグの統治者、ティターニア。
このティターニアはなまじ強力であったせいか本来罪喰いとなった際には知性が失われるはずが例外的に本能がちょっぴり残ってしまったそうな。しかし罪喰いとなった彼女を野放しする訳にもいかないので城に封印してしまう訳ですが、孤独と悲しみのあまり彼女は気が触れてしまい、自らを封印した城の周囲に時折思念を飛ばして精神攻撃を行っていました。
彼女の身の上を考えれば同情の余地もありますが、しかし知性を失い気が狂ってしまった彼女はすでに「老いた存在」であったといえるでしょう。

かつて日本では姥捨という風習がありましたが、このように集落内の年老いて労働力としての価値がなくなった者を処分する風習は「棄老」と呼ばれ、世界的にも見られるものでした。
現代社会では廃れましたが、インフラが整っていなかった頃には口減らしが避けられないものであった事に加えて集落内の新陳代謝を促す為に行われていたと思われます。

「賢き緑の王、虹の国を統べる者としての
 面影はもはやなく、
 ワタシたち妖精は、どうすることもできずに、
 王を城ごと封印したの。」
(漆黒メインクエ「封印の鍵」より )


棄老の風習からも伺えるように、力を失った指導者というのも失脚させられようものですが、シナリオ中に語られているように、ティターニアは強力であると同時に人望も厚い聡明な指導者であった事は明らか。

ちなみに作中に於ける称号・役職としてのティターニアは能力主義に基づく事が明確に語られています。

「よいですか、
 「ティターニア」とは本来、いにしえより引き継がれし、
 ピクシー族の長の名です。
 自然の格別なる恩寵を受けた者が、それを継いできたのだとか。
 それがイル・メグ成立の際に転じて、
 奔放にして混沌たる妖精たちに秩序をもたらす者……妖精王となった。」
(漆黒メインクエ「長老の言うことには」より)


メインクエ進行中で散々妖精族には振り回されてきたので、ティターニアとなるには非常に類稀なるカリスマ性が必要である事は皆さんよーくお分かりかと思います…。

結局のところ、強力な指導者を失ったイル・メグは自然の営みのみならず統治者の代替えさえもままならず、自治体として機能不全に陥って遊び暮らしていくしかなくなったことは想像に難くありません。
自分達の問題を認識こそしていたものの、臭いものに蓋をするというその場しのぎの対処法で生きながらえていたイル・メグの状況は享楽に耽るユールモアとそう変わらないものでした。

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③「二つに一つ」ではなく「二つで一つ」

「できれば力になってあげたいけれど、
 私たち妖精は、星の息吹とともに咲き、
 滅びとともに散りゆくもの……」
(暁月クエ「闇の戦士の再訪」より)


妖精達は大きな流れのあるがままに生きることを良しとしています。
漆黒ストーリー内に於いても、クリスタリウムを始めとする人間達の生存戦略に自ら進んで与する事はありませんでしたが、妖精の統治者たるティターニアと夜を取り戻した際にはその恩返しの一貫として協力を惜しみませんでした。

「奪った分だけ与え、失くした分だけ作り、
もらった分だけ返すのが、不変の『虹の国』。
 だから、この美しい空の分だけ、あなたたちに力を貸すわ。
 本当に困ったときには、必ず呼んでね。」
(漆黒メインクエ「アクトラ・オルワ・イン」より)


勘違いされがちですが(事実として暁の面々からも勘違いされてたんですが…)、妖精達はあくまで停滞した状態からの原状復帰に対して恩返しをしたのであり、それは自然の流れに沿って生きる妖精達の本来の身分以上のものを彼女達は望んでいないという事です。人間達の上に立つ訳でもないが従属する気もない、お互いイーブンな関係性でいましょうね、という事です。

この「互いがイーブンな関係性を保つ」という点で忘れてはならないのがケルト文化圏の二極一対の視点です。
昼と夜、夏と冬、生と死など二極化された要素は互いに入れ替わり均衡を保つことによって自然の営みが巡るという独自の視点で、それぞれの要素はどちらかを欠いてもいけないのです。
漆黒ストーリーでは過剰な光の力を祓い、闇と共に巡る世界のあるべき姿を取り戻すというのが主な目的でしたが、このような考えに基づいたものと云えます。

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④リェー・ギア城の宝はなぜ「四つ」だったのか

「そして、封印の鍵となる魔法を4つの宝に刻んで、
 分担して持つことにした……」
(漆黒メインクエ「封印の鍵」より )


ティターニアを封じたリェー・ギア城の扉を開く為にはイル・メグの各妖精族が持つ秘宝を捧げる必要がありました。
ここで各秘宝と守護していた妖精族をおさらいしてみましょう。

・純白のドレス…ピクシー
・貝殻の王冠…フーア
・石の杖…ン・モゥ
・水晶の靴…アマロ


まるでヨーロッパの童謡に出てくるような美しい品々ですが、そもそもこれらの地域の童謡はキリスト教流入以前の民間伝承を元にしているものも多く、納得の品揃え。

しかし何故に「四つ」の秘宝だったんだと疑問に思う方も多いことでしょう。
日本では類音語の死を連想させるものとして縁起の悪い数字とされている「4」ですが、しかし世界的に見ると実は真逆の意味が込められている数字なのです。
例を上げると、四季(春夏秋冬)、四方位(東西南北)、錬金術を構成する四大元素(火水風土)、そして現代占術の礎のカバラの教えではこの世は四つの次元(四界)によって構成されていると考えられており、「4」とは神秘的な意味を持つこの世の理と断言しても差し支えありません。

「王のもとに集いし妖精たちは、
 その力を強固にするため、水に、樹に、風に……
 あらゆる自然と王とを結ぶ、祝福を授けました。
 罪喰いとなっても、その力は変わっておりませぬ。
 討とうとすれば、あらゆる自然の猛威が、あなた方を苛むでしょう。」
(漆黒メインクエ「長老の言うことには」より)


先程の「4」の真意と作中テキストより、各妖精族は本来ひとところにあるべき祝福の魔法を秘宝として全て分かち、イル・メグの救世主であったはずの妖精王をその恩義に報いるべきという理念を捻じ曲げてでも彼女らなりの生存戦略を選んだと読み解くことができます。


「ドレスに王冠、杖に靴……あなたが集めた4つの宝が、
 本当の意味で使われるときが来たのだわ。
 
 これらは、城を開くための鍵。
 同時に、王に捧げられる4つの祝福でもあるの。
  城が開かれるのは、妖精王を還すとき。
 
 そして、還した勇気ある者を新たな王として祝福する。
 ……それが、この城にかけられた魔法の真実なのだわ。」
(漆黒メインクエ「アクトラ・オルワ・イン」より)


よって、城にまつわる魔法である四つの秘宝の真の意味を要約すれば
「世界の理をあるべきところに戻した勇者を次代の統治者としてその資格を認めると同時にそれに見合った絶大な力を与える」という訳だったのです。
この四つの秘宝の魔法の真実はつまるところ英雄譚(≒JRPGの物語)の典型であると同時に、魔術的な意味合いが強いものだったという事ですね。

なんだかんだ言って、イル・メグは自分達の力がティターニアには及ばない事を自覚していながらも問題解決の救済者としての「勇気ある者」を長いこと切望していた訳です。
ね、ヒロイックファンタジーでしょ!

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⑤ティターニア討伐のほんとうの意義

さて、ここまで異教信仰の価値観をササッと叩き込んで最後におさらいがてら気をつけておきたい事はティターニアは倒すべき悪だったのではなく、正しく弔うべき存在だったということです。
四つの秘宝の封印は妖精王を閉じ込めておくものであったと同時に封印を解くのは彼女を還す時=正しく弔いが行われる時であることは先程の魔法の真実で言及されていました。 
ちなみに、異教信仰の祝祭の儀式は「楽しく行う」事が重要とされており、退屈で眠たくなるような進行より歌って踊って楽しくやるほうが気持ちが昂ぶり祈りも通じやすいという考えに基づきます。
もしかしたらティターニア討伐戦において彼女が華やかな雰囲気を求めていたのは、外に出たいという気持ちと共に彼女が楽しい儀式(葬儀)を望んだという見方もできるかもしれません。 

「堕ちた妖精王を還してくれて、ありがとう。」
(漆黒メインクエ「アクトラ・オルワ・イン」より)


ただ、弔いの後としてはこのフェオちゃんの台詞は大変サラリとしていて拍子抜けするような印象もあります。
が、異教信仰では転生の概念があり、要は「きちんと喪に服すが、過ぎ去った生を大げさに悲しむのでなく、転生を信じて心穏やかに見送る」という姿勢を貫きます。
命が巡る事を知っている自然の化身である妖精族はその生命を決して軽んじる事はないけれども平等に訪れる死に関しても等しく扱うという彼女らなりの死生観でありましょう。
まあこのティターニアは後に生まれ変わるんですけどね!

悲しみが生まれれば後に喜びがあるのはまた必然であり、そうして命の営みが巡る。
漆黒クエストの主題のひとつである二極一対の考えに基づいて、イル・メグは未来に向かって動き出して、物語は大団円を迎えるのです。

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★おまけ

さて、本題は終了しましたが此方の駄文は如何でしたでしょうか。
ちなみにこれ字数制限ギリギリの記事なんです。
ここまで読み切った方は読んでくれてありがとう!もう切り上げてもいいよ!

しかし此処まで読みこんでも「イル・メグが異教信仰とかそんなオカルトくさい訳あるか!!」と云う方は、是非こちらをご覧ください。



一見、不気味な魔法陣に見えますがこちらはソルティス・スパイラルと呼ばれるもので、主に冬至頃に行われる瞑想の為の魔法陣です。


(※Google画像検索結果)

どーだ、そのまんまだろう。
これね、初めて見た時は私も流石にマジでギャーッと叫びました。
ご丁寧に草人まで並べちゃってさ!!

兎に角、文章は九割九分以上が一次資料で出来てるとかどっかのクチの悪いビジネス書もどきに書かれてましたけど、このようにマップの何気ないオブジェクトからも漆黒のテキストの出来栄えが分かるってもんです。

*

ところで、ご存知の方も多いと思いますが漆黒シナリオ担当のイシカワナツコ女史がそれ以前に担当されたという紅蓮エリアのアジムステップでは月神ナーマ像の元へと旅立つドタール族の女の子を助ける、というサブクエストがありました。
もしまだクリアしてない方は是非。

●サブクエスト「母なるナーマ」

詳細は伏せますが、現代(エオルゼア)社会の価値観とは異なる文化を端的に表した非常に印象的なクエストでしたが、そうした異教信仰独特の価値感をイル・メグのメインクエストとして拡張して昇華させたのかと思うと感慨深いものがあります。

あと、明らかに名前だけ借用したものよりは、要素を引用してくれるほうが個人的には好きなのでありとあらゆる創作物がこうあって欲しいと思います。無理だけど。
まあ、そんなこんな文句言っても始まらないんで、此処らでこちらの記事を〆たいと思います。

これに懲りずにまた似たようなことをやらかすかもしれませんが、その際は何卒。

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★参考出典
(敬称略、順不同)

・「魔女の教科書」
・「魔女の教科書~ソロのウィッカン編」
 スコット・カニンガム著、元村まゆ訳(パン・ローリング)

・「聖なる祭壇の作り方」
 アンジュー・キアナン著、ダコタ吉村花子訳(グラフィック社)

・「ケルト 再生の思想-ハロウィンからの生命循環」
 鶴岡真弓(ちくま新書)

・「ケルトの神話―女神と英雄と妖精と 」
 井村君江(ちくま文庫)

・「魔女の聖典」
 ドリーン・ヴァリアンテ著、秋端勤訳(国書刊行会)

・「タロットとカバラ」
 無極庵・くじら神殿(同人誌)

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