最強最愛のビギナーズ第三十三話「クルーエル・セブン」 二人は森の中を走っていた。
姉であるルビーの元に駆け付ける為だ。
「ねえ、アスちゃんこっちであってるよね?」
「うん、間違いないはず」
二人は昨晩、同じ夢を見た。
いくら双子とは言えども、同じ夢を同時に見るものではないだろう。
しかも細部に至るまで一緒だった。
その内容から確信的、運命的なものを感じたトンとアスは、夢の中で伝えられたとある場所を目指しひた走っていた。
出発前の出来事をアスが脳裏に思い浮かべる。
「おみゃあ達本気にゃりか」 昨日の夢の事をマリエに話すとこう帰ってきたのだ。
「はい、本気です、私達はお姉様を救いにある場所にこれから向かいます」
アスの瞳に迷いはない、それはマリエも直ぐに気が付いていた。
「……トンも同じ気持ちにゃりか?」
「うん、もちろん私も本気だよ」
真っ直ぐ見つめる眼が、本気である事を示す。
腕を組み悩むマリエであったが、止める事は出来ないと分かっていた。
そして二人を止めようとは思っていなかった。
何故なら、痛い程気持ちが分かったからだ。
「分かったにゃ、おみゃあ達がそこまで言うのならマリエちゃんは止めないにゃ、いや、止められないにゃ」 諦めたかのように苦笑いを浮かべる。
「ありがとうございます、こんな大変な状況の時に無理を言ってすみません、でもこれだけは譲れないんです、私達の宿願ですから」
「私ももう姉さまを失うのは嫌……、後悔したくないから、行くって決めたの」
二人の決意は鉄よりも固い
「もう何も言わないにゃ、全力でルビーの元に行って助けて三人で戻ってくるにゃ、絶対に約束にゃ」
「分かりました、必ず三人で戻ると約束します」
「私も約束するよ、マリエさんありがとう」
体の前に拳を突き出し、軽く突き合わせる三人。
「おみゃあ達の健闘を祈るにゃ、それと気が付いていると思うにゃりが、大きなハエがおみゃあ達の周りを飛び回ってる、注意するにゃ」
「ええ、分かってます、どんな障害が待ち受けようとも、振り払って見せますから」
迷いが吹っ切れた今、私達に恐れるものは何もない。
最愛の姉に会う為に、突き進むのみだ。
アスもトンも同じ気持ちを心に抱いていた。
「家を出る時、マリエさん心配そうな顔してたよ、必ず無事に帰って安心させてあげようアスちゃん」
「うん、そうだね」
このまま順調に行けば目的地には数時間で到達する、そこまで行けば姉に会える。
目と鼻の先に待つ現実が姉妹を突き動かす。
木漏れ日が燦燦と降り注ぐ森の中腹に差し掛かった時、二人の足がふと止まった。
「アスちゃん……」「……トンちゃん分かってる」
森のざわめきが別の存在が居る事を教えてくれる。
「隠れているのは分かっています、出てきてください」
アスの発言に合わせて、四方の木陰から姿を現す面々。
「あれあれ、ばれちゃってたんだ、気配を消してたつもりだったんだけどなぁ」
「お前が殺意丸出しだからばれたんじゃねえの」
「そら言えてるわ、なんたって極上の相手を目の前に抑えられる訳がねえからなぁ」
「そりゃ俺たち飯より殺しが大好きなディザスターウォーリアですからねぇ、あははは」
勝手に話を進め、笑い転げる下賤な敵達。
「戦士を名乗りながら、仲良しこよしでか弱いレディー二人を狩ろうってさ、アンタら外道中の外道だね、まっ、だからディザスターウォーリアなのか」
トンの言葉にカチンとくる戦士達。
「おめえらが有名なツインメテオなのは知ってる、流石に一人じゃ手に余る、だがこの数ならどうだい、お前達が泣き叫んで命乞いする姿が目に浮かぶぜえぇ」
「言葉遣いから品格と言うものを一切感じさせないのはある意味才能ですね、いいでしょう、時間が無いのでさっさと終わらせましょう、トンちゃん行くよ!!」「OK、アスちゃん!!」
こんな所で油を売っている場合ではない、さっさと片付けて先を急がねば。
ディザスターウォーリアと正面から今まさにぶつかろうとしたその時、トンが感じた。
別の巨大な気配を。
「アスちゃん、どうやら本命が来たみたい……」
「そうみたいだね」
二人の顔色と気配が一気に変わる。
「何が来たって、ああっ、おめえらはこれからここで死……死……」
威勢の良かった戦士が壊れかけのラジオの様に同じセリフをリピートする。
不審に思った仲間が声をかける。
「おめえどうした」
真っ青な顔をして森の奥を指さす戦士。
その先に居たのは、槍を携えた何者かだった。
「あの派手な槍と顔まですっぽりと全身を包んだ鎧、まさか……なんであんたがここに……嘘だろう」
威勢の良かった戦士たちが子供の様に怯え始める。
だが分かる、目の前に居る槍の持ち主から感じる苛烈で凶悪な闘気が。
「嘘もへったくれも無いじゃん、お前達は誰に断って、アチキの獲物に手を出そうとしてるじゃん」
肉食獣が獲物を定めるかのような獰猛な視線がビシビシ飛んでくる。
「待ってくれ、まさかあんたの獲物だとは思わなくてさ、悪かった、俺たちが悪かったから、だから見逃してくれ」
槍の持ち主がケラケラと笑う。
「けっ、お前達みたいなの相手にしてる程、アチキも暇じゃないじゃん、早く消えな、虫けらが」 邪魔者はさっさと消えろと言わんばかりにしっしっと手で払う
「恩に着る」
その場をさっさと離れようとする戦士たちの前に、何故か立ちはだかる槍使い。
「えっ、なんで……」
「……いやぁさぁ、ちょっと考えたんだけどね、お前達も戦士の端くれなら、やっぱり戦って死のうじゃん!!」
「そんな理不尽な……話が……」
そこまで言って、戦士の一人の頭が消し飛ぶ。
今何をしたんだ。
一瞬で張り詰める場の空気。
これはここが戦場になった証だ。
「なんだよ、つまらないな、アチキが相手してやってるんだ、最後位華々しく散れじゃん、カス共が」 ゴミを見る目で相手を見下す派手な槍の持ち主。
「畜生、畜生め、俺達だって戦士なんだ、束になればいくらあんたと言えども殺れるはず…」
「はい二人目」
瞬く間にもう一人の頭が爆ぜる。
慌てふためく戦士達。
相手の力量を知っているからか、ほとんどの者が逃げ惑う。
「嫌だ、俺はまだ死にたくない!!助けてくれ」
「えっ、逃げるとか最悪じゃん、お前らもう死ぬしかないじゃん」
その光景を目に焼き付けるアスとトン。
この敵はすぐにこちらを標的にしてくる、なら今は少しでも相手の情報を掴むんだ。
それが戦いを有利に進めさせてくれるカギになる。
多くの戦いを通して二人はそれを本能と感覚で知っていた。
見る間に無残に消し飛んでいく戦士達。
「お前らいくら何でも手応え無さすぎ、だからウォーリア止まりなんだよ、もっと残虐になってさ、殺しを楽しまないと駄目じゃん!!こんな風にさっ」
そう言ってる間に、戦士たち全てが沈黙する。
「けっ、ウォーミングアップにもなりゃしない、これが同類だと思うとちょっと悲しくなるじゃん」
全身を包む鎧に戦士達の返り血を浴びた槍の使い手がぼやく。
「アスちゃん、この相手、相当強いよ……」
「トンちゃん分かってる……」
声に反応し振り返る槍使い。
「待たせたね、その様子だとアチキがずっとお前達二人を見ていた事分かってたみたいじゃん、流石はマリシャス様を退けたツインメテオってやつじゃん」
「アンタ何者なの……」
トンがもっともな質問を相手に投げかける。
「おっと挨拶が遅れたね、アチキはジュネ、そして……」
どんどん語るジュネと言う存在。
「ディザスターウォーリアの中でもエリート中のエリートだけが選ばれる究極の戦士、もっとも残忍を意味する七人の称号、それがクルーエル・セブン」 二人にそんな事が分かるはずがもない。
だが、目の前の敵がヤバい相手だという事は分かる。
「残忍な七人、クルーエル・セブン……」
力を象徴とするウォーリア達にとっての英雄と言った所か。
「アチキはそのうちの一人、穿孔のジュネじゃん」
「……穿孔のジュネさんですね、分かりました」
穿孔の通り名と先程の戦いで、突系の技に秀でた相手と分かる。
「セブンってまさか、アンタ以外にも六人似たような実力者が居るって事?」
トンがもっともな質問を投げかける。
「ああ、癪だけど確かに六人いるよ、まあその中でもアチキが最強じゃん」
アシエンだけでもとんでもない脅威なのに、こんな規格外の敵がジュネ以外に六人。
対峙しただけで伝わってくる相手のヤバさ。
こんなに心がざわついた相手はマリシャス以来かも知れない。
それだけに目の前の敵は確実に強い。
「お前達をずっと狙ってたんだけど、別の任務があってなかなか襲えなかったじゃん」
別の任務、街や村を襲う以外にも何かしら裏で暗躍していたという事か。
相手の真の目的が見えない。
「貴方達、何を企んでいるのですか」
単刀直入な質問をアスが相手に投げるが。
「そんな事、アチキがペラペラしゃべるとでも? どうしても知りたいのなら、力づくで聞けばいいじゃん」
予想はしていたがこの展開か。
戦いはどうあっても避けられそうもない。
「まあでもさ、安心しなよ、今ここで死ぬお前達には関係のない事じゃん、潔くアチキと戦って死ぬじゃん!!」 このジュネって人、到底見逃してくれそうもない。
ならトンちゃんと一緒に戦って、この局面を打破するのみ。
「トンちゃん、話とどうにかなる相手じゃない、ここは何が何でも押し通るよ」
「アスちゃん、分かった、アンタ強そうだからこっちも最初から本気で行かせてもらうよ!! サンライトメイクアップ、太陽の衣を形としてこの身に宿す」
トンの内なる力を見て喜ぶジュネ。
「う~ん、燃える闘志が良い感じじゃないか、これは楽しめそうじゃん」
「暁光闘士、トン・サンライズ!! アンタなんてぶっ飛ばしてやるんだから」「出来るものならやってみるといいじゃん」
開幕の合図と共に、眼前の敵に飛び掛かる両者。
「これでも喰らっちゃえ、メガァアア・トンパンチィィイ」
トンの熱い想いが籠った爆発的に重い一撃。
「お前、面白そうじゃん、なら私の槍の糧になりなよ、プロドティス」
向かってくるトンの正面から、槍を穿つ。
一見すると普通の一撃だが。
「!?」
異変を感じたトンが慌てて身を翻し、相手の攻撃を全力で躱す。
「トンちゃん!!」
槍の攻撃がトンを過ぎ去ったその時
近くにあった木々が、地面も含め根こそぎ爆ぜた。
「な……」
口を開け呆然とするアス。
「ちっ、あのまま打ち合ってれば、腕一本もげたのになぁ、いい勘してるじゃん」
「……どんな理屈か分からないけど、アンタの槍、正面から受けたらヤバいね」
「アチキの槍は触れたもの全てを穿ち爆ぜさせる、爆発したと思わせる程の貫通力を備えているじゃん」
「なんて攻撃なの、私のバリアでもまともに受けたら危険だ……」
「だから、アチキは穿孔のジュネなんじゃん、全てを穿つ者なんじゃん」 相手を見下したしゃべり方とは裏腹に、その実力は折り紙付きだ。
「まともに打ち合うのは得策じゃない、ならこちらは手数と速さで決めて見せる、ワイルドスクリーム発動からの~疾風の極意」
極限まで高めた素早さで相手の懐に潜り込む。
「はやっ!!」
驚くジュネの懐にトンの拳が炸裂する。
「獣撃必殺、虎王乱舞で押していくよ」
高速で続く連続攻撃が各所にヒットする。
「ぐぇえええ」
ダメージを受けるジュネ。
「このまま押し切る」
「調…に…るな」
くぐもった声がふとトンの耳に入ってくる。
「雑魚が調子にのるなって言ってるじゃん!! カエノメレス!!」
攻撃を受けながらもお構いなし、怒り心頭で繰り出す一撃。
近接で攻撃を仕掛けていた為、いつもよりトンの反応が少し遅れる。
「ヤバイ!!」
「ニャンコバリア五重奏」 トンの前に展開される多重結界。
「トンちゃん今のうちにそこから退避して」
「ありがとう、アスちゃん」
トンが後方に退くと同時にアスが張ったバリアいとも簡単に貫通され砕けた。
「分かってはいたけど、想像以上の貫通力、あれが穿孔のジュネ……」
当の本人は体の各部をさすりながら怒りを露にしていた。
「いてて、あんなに一方的にボコボコに殴られたのは久しぶりじゃん、でも痛みってさ気持ちいいよな、生きてるって感じがするじゃん」
「結構本気で攻撃を仕掛けたんだけど、まだまだアイツ元気そうね、むしろ元気になった?」
相手のタフさと、意味不明さに気味悪さを感じる。
「瞬時に跳ね上がったスピードと、容赦のない乱打、お前達人にしておくにはもったいないじゃん、どうだい今からでもディザスターにならないか?」
このタイミングでその切り出しはどうなんだろうと思いつつも、相手の力量に恐れをなしてその道を選ぶものも居るかも知れないと感じ取った。
「折角の申し出ですが、お断りさせて頂きます」
「私もお断りだねー!!」
二人に振られ悲しそうな顔を浮かべる。
「ちえっ、アチキが助かる方法を提示してやったのに、恩知らずなやつらじゃん、やっぱり死ぬしかないじゃん」
ジュネが槍を構え深く体を沈める。
「あの姿勢は……」
「お前達、竜騎士を知ってるかい」
急な質問だが、もちろん知っている。
「ええ、都市国家イシュガルドに語り継がれる竜を屠る者、その名が竜騎士だったと記憶しています」
「その通りじゃん、そしてアチキが使っているこの身体は生前竜騎士だった者じゃん、竜騎士の特徴は二つ」
途端に始まる竜騎士講座。
「一つはこの獲物である竜すら穿つ槍、そしてもう一つは……」
「もう一つは?」
「上空から相手を穿つ圧倒的な跳躍力じゃん」 そういえば聞いたことがある、竜騎士は携えた槍を持ち遥か上空から敵を正確に狙い串刺しにすると。
「その片鱗を今から見せてやるじゃん!!」
足の大腿部を囲む筋肉が肥大する、更に身を低くかがめたと思いきや矢の様な勢いで上空に飛び立つ。
あっという間に目では見えない高さまで昇り視界から消えた。
「なんて脚力とバネなの、あんなジャンプ私には到底できない……」
「これが竜騎士の跳躍力……聞いていたものより全然高い」
素直に驚く間などなかった。
上空に消えたと思った瞬間、キラリと光るものが目に入った。
ジュネが持つ槍が日の光に反射したのだろう。
「ただでさえとんでもない威力の攻撃があの高さから降りかかって来たら……とても防げない」
「アスちゃん、どうしようあの高さじゃ流石に迎撃出来ないよ」
途方に暮れるトン。
「トンちゃん、これから私の全力防御を張るからこっちに来て!!」
叫ぶように妹を呼び寄せるアス。
「出し惜しみ無しなんてとてもしてられない、とっておきだったけどこれを使うしかない」
アスが目をつぶり詠唱を始める。
その間、トンはこちらに降ってくる標的を見逃さない様に相手に視線を固定する。
「詠唱完了、ニャンコバリア十重奏、デクテット最大展開!!」 なんとアスは五重奏を超えただけではなく、倍以上の強度を誇る十重奏を習得していたのだ。
ただ、膨大な魔力を必要とする為おいそれとは使えない。
しかし、あの空から降ってくる最強の槍の攻撃を防ぐには今はこれしかない。
だったら躊躇っている場合じゃない。
「先ずは敵の絶対的な攻撃を耐えしのぐ」
遥か上空から声が聞こえる。
「何をしたってアチキの攻撃の前には無駄じゃん、これでお終いにしてあげるじゃん、ディアトン・アステラス!!」 空の彼方から自重と落下速度を利用した、さながら天空の槍が二人に降り注ぐ。
「これで砕け散るじゃんっ」
槍を下に向け高速で迫るジュネ、その姿は正に一かけらの流星。
ジュネの鉾とアスの盾が互いの領域に触れ激突する。
嵐の様に森が騒めき、動物たちは怯え、空気が波打つように振動する。
「なんて火力……なの」
「へえ、アチキの奥義を初手で受け止めるとはやるじゃん、でも何処まで耐えられるかな?」
表面上はどうにか受け止めたが、想像以上の攻撃にアスが片膝を着く。
一進一退の攻防に見えたが、どうやらアスが押されている。
「くっ……」
最大魔力故に消費も激しい、このままではじり貧だ。
どうにかしないと。
「魔力を大量に注いでどうにか防いでるみたいだけど、それもこれでお終いじゃん、アチキのとっておきをみせてやるじゃん」
次にジュネがとった行動はこうだ。
「ふんっ!!」
空を蹴った、いや大気を蹴った。
「えっ」
「空を蹴った?」 言葉を失う二人。
今の動作で、更に増した速度と落下のパワーが技に込められる。
「これが真の流星だ、二人とも仲良くくたばるじゃん!!」
”ピキッ”
嫌な音が辺りに木霊する。
それはアスが構築したデクテットの表層がひび割れた音に他ならない。
迫る敵の魔の手、二人はこの境地を乗り越え姉の元にはせ参じる事が叶うのであろうか。
「……どんなに追い詰められようとも、引けない理由が私達にだってある」 アスの強い意志がその時静かに燃え上がった事にまだ誰も気が付いていなかった。
~続く~■FF14外伝 連続空想小説 最強最愛のビギナーズFF14の世界であるエオルゼアを舞台にしたビギナー姉妹とアクア・ルビーの物語。
1話~33話まで絶賛公開中!!
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各話こちらからご覧になれます■物語はここから始まったビギナー姉妹とアクア・ルビー鮮烈な出会いを記した第一話は下記リンクより
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最強最愛のビギナーズ 第一話「出会いからしてこの姉妹最強すぎる?」