最強最愛のビギナーズ第三十五話「姉の為にできること」「姉に敵意を向けるなんて、とんでもない妹達だね、散々お世話になったんでしょう?」
姉の姿で語るアシエン。
「なら、今すぐその身体から出て行ってもらえませんか、そうすれば貴方の薄汚れた魂を滅するだけで私達の手間も済むのですが」
アスは憎しみに近い感情をむき出しにする。
そう、心底怒りを感じているのだ。
姉の身体を我が物とした目の前の敵に。
「……ねえアンタ、そこまでして生き残りたかったの? 私達の大事な人を奪ってまで、目的の為なら誰を犠牲にしてもいいって言うの?」
トンの言葉は何よりも悲痛だ。
「ああ、ボクは手段なんて選ばない、それが下等な人であれば尚の事でしょ、何を躊躇う必要があるのか」 二人は目の前の存在が敵なのだと改めて知った。
和解の余地など無い、滅するべき敵なのだと。
「良かった、同情の余地でもあったらどうしようかと思ったけど、アンタ達にはそんなもの皆無だったみたい」
拳を強く握るトン。
「素直にお姉様の亡骸だけでも返してもらえたらと思ったけど、力尽くで奪い取るしかない様ですね」
本を構えるアス。
身も心も臨戦態勢の姉妹がルビーの前に立ちふさがる。
「全くこれだから人という愚かで野暮で粗野な蛮族は困る、何でも力で解決すればいいと思っているのだから、だが正解だ」
剣を抜く真紅の騎士。
「歴史とはそれ即ち闘争、力で勝ち取ってこそ意味がある、なら君達も礎に、その糧になるがいい!」
猛ダッシュでアスに迫り、剣を振るう。
「ディバインソード」
それは紛れもなくルビーの技だった。
「ニャンコバリア五重奏」
渾身の突きを、緑の光が織りなすベールで防ぐ
「この程度では流石に通らないか」
再び距離を取るマリシャス。
「お姉様の技をそっくりそのまま使えるなんて、貴方は自分が憑依した体の能力を全て使用できるのですね」
敵がニヤリと口元を歪める。
「いい着眼点だ、殆ど正解と言っていいだろう、強いて補足するのならば、生前の記憶も継承される」
記憶までも、能力を使えるのならそれも当然か。
それだけに許せない。
アスの心に募る憤怒。
「だからね、この身体の持ち主が君達姉妹をどれだけ大事にしていたかも分かるんだよ、だからこそ、この手で葬ろうという心遣いが分からないかなぁ?」
「アンタはぁああああああああああ」 たまらずトンが拳を振るい飛び出す。
「おやおや、ずいぶんと血気盛んな事で、俗に言う若気の至りというやつなのかな」
「サンシャイィイイン・トンパンチィイイ!!」
怒りも籠った太陽の拳がルビーの姿をした別の者に向けられる。
「そんなストレートすぎる馬鹿正直な攻撃まともに当たるとでも? レイヤーオブライト」
光が紡ぐ鉄壁が爆発的なトンの攻撃を阻む。
「これが姉さまが織りなす光の壁、なんて防御力なの」
「そして攻撃を防がれた君は無防備になる、ここでウィングスマッシュだ」
素早く発動させた光の翼を横から力いっぱい叩きつける。
「ぐっううう!!」
片腕のガードを入れるも、横に勢いよく転がるトン。
「どうした、君の力はそんなものか、あのギレイちゃんを退けた戦士とは到底思えないね」
「極炎法四連!」
アスが特大の炎でマリシャスを狙い撃つ。
「隙を突いたつもりなんだろうけど、その程度予測していないボクだと思ったのかな」
迫る炎を背後の翼で悠々と薙ぎ払う。
「以前一度この程度で、このボクをどうにか出来ると思っているとは相当に舐めているようじゃな」
話しながら振り向くと、払ったと思った豪炎が顔の前にあった。
直撃と共に巻き起こる爆音。
「極炎法四連を上空からも同時に放っていました、気が付きませんでしたか? それと、決して貴方を侮ってはいませんよ、むしろ最大級に警戒していますから」 盾から煙をまき散らしながらこちらを見据えるアシエン。
「君は同時にいくつ魔法を唱えられるんだい、確実に腕を上げたみたいだね、それだけに煩わしい……」
「お褒め頂きありがとうございます、でも成長したのは私だけではありませんよ、特にもう一人の方が成長著しいと私は思います」
誰の事を指しているかは一目瞭然だ、そして言葉の意味する所を察知し振り返るマリシャス。
「あんな程度の攻撃で私をどうにか出来るかと思ったら大間違い!!」
突進する赤いミコッテの姿が目に入った。
しかし、まだ距離はある、次の攻撃に備える余裕は。
「どこ見てるの? 私は後ろだよ」
目の前に居た筈の標的の声が後ろからする。
背中に感じる凄まじいばかりの衝撃。
「なんだと……、動きが全く追えない、これは一体」
「ワイルドスクリームを超えたワイルドスクリーム、攻撃力、防御力、素早さ、回復力、その全てが爆発的に跳ね上がる、それがワイルドスクリーム極だぁああ」 マリシャスは動揺した、自分が今何をされているのか分からない、それほどに速い。
相手を感じ取れるのは攻撃を受けた瞬間の痛みのだった。
四方から超スピードで連撃を繰り返すトン。
あまりの速さに、為す術なく攻撃を受け続けるマリシャスの身体が宙に浮く。
「これでフィニッシュ、サンシャィイイイン・トンパンチィイイイイ」
防御する事も一切許されず、渾身の一打を上から叩き込まれた。
「ガハァアアアア!!」
吐血しながら地面にめり込む。
「ふぅ、調子に乗るのはアンタの自由だけど、私達を侮らない方がいいよ」
震える手を地表に掛けながら這い出る偽りの姉。
「ここで一気に決める」
トンは再び拳を構え駆け出すが。
「君達は正気なのか……」
思わぬ言葉に直前で足を止めるトン。
「何が正気なのよ、アンタの方がよっぽど正気じゃないじゃない」
「いや、仮に中身は別人とは言え、姉と慕う自分物の身体を何の躊躇いもなくよくここまで出来るものだと感心していたんだ」
「感心していた……ですって」
アスの声が震えている。
「だってそうじゃないか、普通は自分が家族と思う大事な人にそんな仕打ちが出来るかい、いや、出来ないね、それをさらりとやってのけるんだ、正気を疑うのも当然だろう」「アンタがアンタがそれを言うのか、私達から二人も姉を奪ったアンタがぁあああああ」
拳を振りかざし思い切り殴りかかるトン。
「……ねえ、トンちゃん、お願いだから止めて」
姉の姿と声で懇願するマリシャス。
「えっ」
標的を狙った拳は大きくずれ地面にめり込む。
「ありがとう、トンちゃん、お姉ちゃんは信じてたよ」
トンをそっと抱き寄せ、腹部に剣を突き立てる。
「カハッ!!」
大量の吐血と腹部に鮮血を滲ませもがき苦しむ。
「甘いトンちゃんなら攻撃を外してくれるって信じてた、アスちゃんもそうだよね」
中身は違う癖に、姉の顔そのもので満面の笑みを向ける。
「今、唱えようとしてる魔法、お姉ちゃんにぶつけたりしないよね、アスちゃんはそんなひどい事する子じゃないもんね」
記憶と経験その両方を自由に引き出し自分の武器にする最悪の敵。
「お姉様の姿で、お姉様みたいな事を言うなぁ!」
首をかしげるルビー。
「だって、私は貴女達のお姉ちゃんだよ、お姉ちゃんみたいな事言って当たり前じゃない、ねっ」 いつの間にかアスの目の前に移動し、同じように腹部を剣で刺す。
「グググッ……」
くぐもった声を上げながらうずくまるアス、赤く染まる脇腹を押さながら地に崩れる。
「優しい妹達でお姉ちゃん安心した、いや、馬鹿な妹達でボクは笑いが止まらないよ、アハハハハハハハッ!!」
辺りに響くほど盛大な笑い声を発する悪魔。
「ここまでして私達を殺したいの……」
回復魔法を施しながらアスが問う。
「ああ、殺したいね、光の戦士は邪魔だ、その中でも君達は特別に、君の師匠も後ほどこの姿であの世に送ってあげよう」
マリシャスがアスに止めを刺そうと剣を高く振りかざす。
「あの世で姉との再会を楽しむといい、サヨナラだ!!」
「私の姉に手を出すなぁああああああ!!」
トンの飛び蹴りが背中に炸裂し、もんどりうって転がるも、反動で直ぐに起き上がる。
「今あれだけのダメージを与えたというのに、もう動けるとは驚きだ、まるで野獣の様な回復力だね」
体に付着した埃を叩き落としながら、ゆっくりと話す。
「だけど、想像以上に傷が深かったようだね、それでは完治には当然至らない」
トンの足元から滴る血が傷の具合を教えてくれた。
「アンタ、お姉ちゃんを利用したな、一番やっちゃいけない事をしたんだ、体の傷は何時か治る、でも心の傷は一生治らない事だってある、アンタにはそれが分かってない、だからそんなむごい事が出来るんだ」「君に何が分かる……」
「アンタの事情なんて知った事じゃない、でもこっちの事情だって知らないでしょう、私達には他に居なかったのに、アンタはそれを奪っただけじゃなく、汚したんだ」
「ふっ、なるほどね、確かにお互いの事情などどうでもいい事か、それには賛同だ、だが君達人如きと私達を一緒にするのはいただけない」
「それはこちらとて同じ事です」
傷をある程度回復させたアスが戦線に復帰する。
「ただ、貴方は踏み入れてはならない領域に土足で踏み込み、思い出を踏みにじった、それだけは絶対に許せない」
アシエンをキッと睨むアス。
「トンちゃん、いける?」
「アスちゃん、もちろんだよ、例え足がもげてもコイツを倒そう」
「うん、そして二人でお姉様を弔おう、それが私達残された者に出来る事だから……」 寂しそうな表情を浮かべるが直ぐに何時もの顔に戻る。
「アシエン、もう貴方との戦いにはいい加減飽きました、だからここで終わらせます」
「出来るならやってみたらいいんじゃないかな、君達との戦いに飽き飽きしてるのはボクも同意だ」
「なら、交渉成立って事で第二ラウンド開始だねっ!」
トンは言葉を放り投げると同時に、矢じりの様に勢いよく飛び出す。
先ずは左足で蹴りを繰り出すが、敵はそれを見越していたかの様に盾でしっかりと受け止める。
すかさず突きで喉元を狙うも、華麗なバク転で躱すトン。
すぐさまかがみ、相手の足目掛けて低く蹴りを叩き込む。
これも上手く盾を地面に着きさす事で受け止める。
「貴方の敵はここにもいますよ!エオスおいで、そして紡いで」
敵に向かい走りながら、衣とその姿を変える。
「妖精拳士エオス・ナックル降臨です、そして参ります」 防御は不要とばかりに攻撃に全てを捧げるアスの転身。
「精魔ブレイク!」
妖精と魔力を注いだアスのみが使える攻撃を打つ。
「私も行くよ、サンシャィイントンパンチィイ!」
トンも同時に放つ太陽の拳。
二つの力が交わり、マリシャスの盾目掛けて押し込む。
「くっ!!」
流石に二人同時の攻撃を前に後ずさるがそれでも翼を広げて押し留まる。
流れる様なモーションから続くトンのコンボ。
「ここから更に、サンシャィイバックブロォオオオ!」
太陽を有する裏拳の連弾に膝を着く。
その隙を見逃さず、横からアスの攻撃が迫る。
「轟け、インテリジェンス・アス・ボンバー!」
美しくも苛烈な打撃が敵を捕らえる。
「まだだ、レイヤーオブライト」
光糸を紡ぎ完成する光の繭が完全に攻撃を遮断する。
「こっちだってまだまだ終わらないんだからぁ、全力ワイルドスクリーム極からの」
トンの手の内でぼうぼうと燃え盛り集束する太陽の炎が吼える。
「なら私も一緒に」
周りに発生する妖精の力と魔力の渦がアスの手に寄り集まる。
「サンシャイン・トンパンチ・ダブルインパクトォオオオオオ!!」
「霊滅パラダイス・クロッシングゲート!!」 双子が解放するそれぞれの本気が一つに交わり、敵を討滅する最大の力になる。
「この力は……」
この攻撃はまずいと感じながらも、美しさに見惚れるマリシャス。
間もなく直撃する。
光の力に魔力、妖精力、それらが合わさった究極の必殺技。
衝突すると同時に、堅守を誇る繭に解れが生じる。
解れは徐々に大きくなり、遂には繭そのものを破壊した。
「何と言う威力、これが君達二人の力……」
驚嘆の声を上げるしかないマリシャス。
鉄壁を破壊しながらも止まらぬ奥義の余波を余すことなく浴びる。
「うぉおおおおお」
衝撃と爆発をその身に伴い地面を勢いよく転がる。
これはチャンスとばかりにそれを見逃さない姉妹。
「トンちゃん、ここで一気に仕留めるよ!」
「……OK!」
返答までの一瞬の間が気になるアス。
トンは拳に太陽の力を込め、最後の攻撃を加えにいく。
「う……う……う」
マリシャスは、大きなダメージを受け、まだ起き上がる事が出来ずうめき声を上げる。
「サンシャィイイイイン・トンパンチィイイ!!」
熱風をまき散らしながら止めの一打を撃ちこむトン。
「ねえ、トンちゃん……お姉ちゃんを殺すの?」「!?」
”ドンッ”
周辺に響き渡る強打音。
トンの攻撃が獲物を仕留めた音なのだろうか。
いや、そうではない。
拳は対象の顔面を外れ、右側にめり込んでいた。
たまらず後ろに下がるトン。
「出来ない、私には出来ないよ、お姉ちゃんを殺すなんて、例え違うと分かっていても出来ないよぉおおおおおおお」 やりきれない切実な思いが声となり木霊する。
「トンちゃん……」
気持ちは分かる、私だって同じだ、妹が出来ないなら姉である私がやるしかない。
「私がやる、トンちゃんどいて」
泣き崩れる妹は声に反応し、よろめきながらも横にずれる。
「貴方は生きてちゃいけない、多くの人に災いをもたらすから、ここで始末をつける、集え妖精と魔の力、精魔ブレイク!」
拳に込めた両の輝きを相手に叩き込む。
「アスちゃん、お姉ちゃん信じてるから……」
姉の笑顔と声がアスの耳に入る。
その結果、拳はルビーの顔すれすれの所で止まる。
「なんで、なんで出来ないの、このお姉様は偽物だと分かっているのに、私はどうして打ち込めないの!!」
頭を抱え座り込むアス。
「ここでアシエンを倒さなきゃいけないって分かってるのに、それなのにお姉様の笑顔と声が浮かんでくるのは何故なの……」 頬を伝う涙を両手で覆う。
「ふう、危なかった、君達に良心が無ければ、ボクはやられていただろうね、でも良心があったからこそボクは生きている、ありがとう、二人とも本当にありがとう」
戦意を失い泣き崩れる姉妹。
姉への思いが溢れもう何も出来なかった。
それだけ二人はルビーを愛していた。
家族だったのだ。
マリシャスはその気持ちを知っていて利用した。
「ふん、ずっと見ていても気持ちのいいものではないな、いい加減君達の家族ごっこに付き合うのも飽き飽きだから、終わりにさせてもらう」 ルビーの姿でアスの前に立つ。
「姉に止めを刺される事を光栄に思うがいい、まあ、せめてあの世では三人仲良く暮らすんだね」
言葉の陰に含みを感じる。
だが、そんな事はどうでもいい。
姉の元に行けるのなら、死も悪くないかもしれない。
また、トンちゃんと三人で仲良く暮らそう。
きっとお姉様も許してくれるはず。
頑張ったねって、頭を撫でてくれるはずだ。
目の前で剣を高々と振り上げるマリシャス
「――サヨナラ、トンちゃん、先にあっちで待ってるね」
渾身の力でアスに向けて振り下ろす。
「アスちゃん!!」
トンの声が聞こえる、あっちでもずっと仲良くしようね。
私は今ここで終わるんだ。
覚悟を決めたアスがその時を待つ。
しかし、おかしい。
とうに振り下ろされたであろう剣が私の身に届いていない。
何故。
目を開きゆっくりと事実を確認する。
――なんと、剣を振りかざした状態でルビーは止まっていた、静止していたのだ。
「な、なんだと、体が動かない、これは……」 アシエンは止まっていた、まるで世界が静止していたかのように。
止めを刺すのを躊躇っている?
いや、そんな筈はない、確実に私達を殺そうとしていた、なら何故。
もしかして、お姉様が止めている?
「馬鹿な、これはもしや、ボクの内に誰かが潜んでいるのか、だが、そんな人物は一人しかいない」
間違いない、今アシエンの中で抗っているのは、ルビーお姉様だ。
リリーナお姉様が言っていた、ルビーお姉様を救っての欲しいの意味が、体の解放だと思っていたけど、もしや勘違いしていたのか。
もし、そうだとしたらまだお姉様を救う手立てがある。
なら、こんな所でうだうだしてる場合じゃない。
今度こそ、お姉様を救うんだ。
「トンちゃん、お姉様は生きてる、これから二人で救うよ!」
アスの言葉を耳にして泣き止むトン。
「姉さまが生きている? 本当に?」
その言葉に力強く頷く。
「それなら、泣いてる場合じゃない、頑張らないと、私が頑張らないと!」
「そうだよね、もう一度頑張ろう、お姉様の為に、私達の為にも!」
再び立ち上がる姉妹。
敵の方を見据え今度こそ誓う、姉を救うと。
「諦めるのはやるだけやった後でいい、だけど、今はまだそのときじゃないから」
「アシエン、私達の姉さまを返してもらうよ!」 思いの力が二人を突き動かすのであった。
「おのれ、光の戦士め……、ボクの思い通りにならないものなんて、皆まとめてボクが滅ぼしてやる」
ルビーの姿をしたアシエンとの戦いは新たな局面を迎える。
~続く~■FF14外伝 連続空想小説 最強最愛のビギナーズFF14の世界であるエオルゼアを舞台にしたビギナー姉妹とアクア・ルビーの物語。
1話~35話まで絶賛公開中!!
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各話こちらからご覧になれます■物語はここから始まったビギナー姉妹とアクア・ルビー鮮烈な出会いを記した第一話は下記リンクより
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最強最愛のビギナーズ 第一話「出会いからしてこの姉妹最強すぎる?」