「知るための旅を続ける者」
「知ることに気づき、受け入れる者」
「知ることを恐れ、拒んだ者」
思えば私はこれまでずっと物語の主人公だった。
冒険者。光の戦士。英雄。解放者。闇の戦士。星を救いし者。
私を知る人からは様々な認識をされている。「暁の血盟」の一員と思っている人もいるだろう。長かったような短かったような、時間の感覚は曖昧だけれども、最前線にずいぶん立ち続けていた。
それでもやはり私は冒険者なのだ。もっと言えば、何の因果か「アゼムのクリスタルを持つ者」である。こればかりは否定しようがない。見知らぬ土地へ行き、その土地の人々や文化と出会うのが好きなのだ。そこに理由なんてないのだ。あるとしたら「アゼムのクリスタル」に尽きるのだ。
そんななか、「私を王にするのを手伝ってほしい」という話が舞い込んできた。なんだか面白そうだなと思っていたら、気づいたらトラル大陸の大地に立っていた。
「私を王にしてほしい」と声をかけてきた彼女は、とても気持ちのいい性格だった。いろいろな課題を真正面から、彼女なりに挑んでいた。そして、彼女自身は気づいていないかもしれないが、おそらく隠し事ができない性格だろう。そんな彼女を見ているうちに、わりと本気で「彼女を王にしてあげたい」と思ってしまった。
彼女の成長を見守るのが、とても楽しかったのだ。
つまるところ、この物語の主人公は私ではなく、彼女なのだ。
彼女の歩みを、すぐ近くで見続けてきた。彼女の物語はまだ終わっていない。むしろこれからだろう。そのことは彼女自身も自覚しているはずだ。彼女が今抱えている問題は、とても多い。
その「問題」の話をするためには、やはり、もうひとりの「彼女」のことに触れないといけないだろうか。
「彼女」は、立場的にも性格的に彼女と近い部分もあった。
私が「彼女」のことをどれだけ「知っている」か分からないのだけれど、「彼女」はなんというか、掴み所がない存在だった。私が直ぐ側で見てきた彼女とは逆。何を考えているのか、本当のところを、大事なところを話そうとしない……あるいは話せない……のだ。なにかしらの事情があったのかもしれないけれど、結果的に掴み所がないと感じてしまった。
今、「彼女」と会話をすることはもうできない。ただ「彼女」は、民を思う心優しい王だったのは間違いないだろう………いや、「優しすぎた」のかもしれない。
優しすぎるあまりに、民を傷つけたくないと思うあまりに、きっと「彼女」は「彼女」であることを辞めたのだ。
私は思う。私が新大陸でともに旅をし、成長していくさまを見てきた彼女が、「彼女」と同じ立場だったらどうしていただろうか、と。
今の彼女ならきっと、民の想いを「知ろうとした」だろう。
もちろん理王にも相談するだけれども、あの旅を通して「知ること」の大切さを知った彼女なら、きっとそうしたのではないだろうか…………
かたや亡国の「彼女」は愛する民の声を「知ること」が出来なかった。躊躇ったのか、恐れていたのか……「知りたい」と思っていたとして行動に移せなかったのは、「彼女」が「優しすぎた」が故なのだろうか………「彼女」が彼女ともっと早くに出会っていれば、歴史は変わっていたかもしれない……って、私の想像でしか無いのだけれどね。
さーて。彼女の物語にもう少し付き合うことになりそうだ。彼女が何を想い、どんなことをするのか、見守りたいって素直に思う。それはそれとして、私は私で並行して「暁」的な行動も増えていきそうな気配だ。今回の彼女の旅に同行したことで、思わぬ世界の広がりを目にしたわけで。私の好奇心は刺激されるばかりだ。
ならば、覚えていろ。
私たちは……確かに生きていたんだ。
Remember us...
Remember... that we once lived.
あの時の彼の声が蘇る…。
覚えておくべきことが、またひとつ増えたよ。