こんにちは、みーさまです。
フレンド向けにちまちま書いていたFFの2次小説を本公開します。
*蒼天アラのネタバレありなので注意ください。
小説など書いたこともなかったのですが、いきなり本格的な物に挑戦してみました。
それではどうぞ!
「魔女の輪舞曲[ロンド]」
アライアンスダンジョン、影の国ダン・スカーの最深部。
そこに、黒魔道士がいた。若い女である。帽子の形を見るに、種族はミコッテのようだ。
彼女の髪は淡い緑色である。エオルゼアでは珍しい。あまり知られていない部族の出だろうか。
服装は黒魔道士の例に漏れず、漆黒。
無表情だが、大きな瞳はじっと悪魔を見据えていた。
古の大悪魔、ディアボロス。
ミコッテの女とは対象的に、薄気味悪い笑みを浮かべている。
「たった一人で我に立ち向かうのか?人間よ。偉くなったものだな。」
泰然とした態度で軽口を叩いている。
「……あなたこそ、何百年寝ていたの?」
「……寝起きのあなたに、”目覚まし時計”を叩きこんであげるわ。」
そう言い放つと、その女はおもむろに黒魔紋を置く。
悪魔がまだ油断しているようだ。
魔紋の発動と同時に、軽やかにステップを踏み始めた。
ー[3連魔]、…[ファイガ]、……。
六芒星の頂点をかかとで踏みしめている。みるみるうちに、魔法陣に魔力が込められていく。
踊る黒魔導士など、見たこともない。
………♪
透った声による詠唱は、歌声のようにも聞こえる。
[ファイジャ]……、ステップを踏みながらくるりとまわり、杖を振る。
ミィ・ケット音楽堂の舞台に立つかのように、気高く、あでやかに。
踊りが愉しいのか、心なしか微笑んでいるように見える。
妖精王の名を冠した杖は美しく煌めき、残光が軌跡を描く。
ディアボロスがそれを面白そうに眺めている。
ーーー人間共も、私が眠っていた間に、少しはエーテルの流れを勉強したようではないか。
だが、我は長い時を生きた悪魔。”格”というものを教えてやろう……。
女の独創的な魔術に、ディアボロスもその気になったようだ。
両手を胸の前で構え、紫色の火球を創り出す。大悪魔の名に恥じぬ、莫大な魔力量である。
対する女は黒魔紋の中心に立ち、杖で地面をつつく。
……詠唱が終わるようだ。
[焔の妖精たちよ、踊って]。
—セイントファイジャ……!
—------
ゴウ、という音とともに1つの火球が発生し、悪魔に飛び込んでいく。
杖から迸ったフェアリーたちが周囲を飛び回っている。それも何匹も。
それも異常だが、
魔法自体も明らかに一般的な”ファイア”系統の魔法ではない。”真っ白”に燃え盛っている。
この大悪魔ですら少し動揺しているようだ。
ーーセイント……?悪魔特効か。しかも魔力密度も極限まで高めている。この女、若いが相当な手練れか。
黒魔紋を複雑に取り入れた”舞踏”を使い、常識では考えられないほどの繊細な魔力操作を実現しているようだ。
さらに、杖の加護により、”妖精のおまけ”つき、と来た。
—この女、この時代の”魔女”か、面白い……。
「人間にしては、面白い”小技”を使うようだ。」
「だが、去ね。この前の”魔女”のように。」
ニイ、と口角を歪め、先ほどから力を込めていた魔力球を放つ。
—魔女の聖属性魔法と対になる”禁呪”、ダークファイジャ。
その炎を見に受けた者は魂をも焼き尽くされ、輪廻転生の輪から外れる、と言われる。
生命、そしてハイデリンを冒涜する、悪魔らしく実に陰険な魔法。
「”地獄”に堕ちるがよい。」
辺り一体に紫炎が広がる。
ファイジャよりも出が早く、先に女のもとへ襲い掛かってゆく。
防がねばまずい。
女は既に舞っていた。今度は”守りの舞”。
—--[氷の妖精たちよ、集え]。
—アイスマバリア[“氷壁防御魔法”]。
女の周囲に魔法障壁が展開され、火炎を防ぐ。
アイスフェアリーたちの支援があるものの、悪魔の魔力が圧倒している。
みるみるうちにヒビが入り、長くは持たないように思えた。
—一方、悪魔は。
ダークファイジャの中をすり抜け、セイントファイジャが遅れて飛んでくる。
白い火球が炎を纏い、フェアリーたちは楽しそうに周りを飛び回る。
悪魔も魔力を飛ばし、魔法の威力を殺そうとするが、妖精がそれを許さない。
–ワタシたちトモ遊ボウ!
無邪気な声で妖精たちは悪魔にささやく。
……チィ!妖精の遊びなど禄でもないと決まっている!
今は少し距離をとらねばならん……、
と、思考した瞬間、
………”魔法が頭に直撃”した。
純白の炎は頭にとどまらず、全身が業火に焼かれる。
妖精たちは苦悶の声を上げる悪魔を見てキャッキャと笑っている。
「”イタズラ”シチャッタ!」
……”魔法を転移させた”ようだ。
—--グ、、、我を苔にしおって……貴様ら、ただで帰れると思うなよ……。
瞳に憤怒の炎を滾らせる。
女が冷たい目で言う。
「……私の”悪魔特攻”は特別よ。」
「一度悪魔に火が付いたら、……二度と消えない。」
「ハイデリンが存在するうちは。」
この魔女も悪魔顔負けである。
……大口を叩いた悪魔はあっけないが、既に勝負は決していた。
悪魔のコアまでどんどんと炎が浸食していく。
ー憎らしい”魔女”め!時代が下り、ハイデリンの悪魔対策が進んでおったのか……!!
こんなものは負けと認められん。お前の魂の色は覚えた。”地獄”に落としてやる、覚えてい、ろ、、、……。
魔女を睨み続けたまま、悪魔は後味の悪い捨て台詞を吐く。
そうして、煙となった。
……緊張が解け、魔女が膝を付く。
“たった1発の魔法”に全ての魔力をつぎ込んだため、一瞬でMPが空になる。
大きな月を眺めながら、空虚な体を休めた。
—---
最深部に遅れて到着し、魔法戦の様子をうかがっていた冒険者たちがいた。
目を丸くしている物、感嘆する者。
「ここはアライアンスレイドだぞ!? 魔法一発でボスが蒸発してるじゃねえか……。」
「火力が黒魔一人のレベルじゃねえだろ……。”化け物”かよ…。」
装備がちぐはぐな二人が、あきれ顔で話している。
「おいおい、お前ら新入りか?あいつがあの”魔女”だよ。」
「あの女が!? 舞踏が得意とかっていう……なんだよ、美人な踊り子かと思ってたぜ……。」
何を勘違いしているのか、がっかりしている者までいる。
”魔女”が振り向くと、冒険者の集団は気まずそうに帰り支度を始める。
折角最深部まで来たのに出番がなかった、というのも去ることながら、
彼らは”魔女”を畏れていた。
たった一人で、冒険者24人よりも強大な火力[DPS]を持つ”魔女”。
機嫌を損ねたら、消し炭にされるのは明白。自分たちより圧倒的に腕が立つ女には、愛想笑いするか、距離を取るか。皆、リスクを避けたがる。
冒険者たちの言葉に、魔女はふと我に返る。
無為に生きる日々。
ただ、戦って、敵を倒すだけ。
家族を霊災で失った私に、生きる意味など、とうに無い。
著名な黒魔道士で、新しい魔術の研究に余念の無かった父。
劇場邸”プリマビスタ”では常に引っ張りだこ、一流の踊り子だった母。
小さいころから二人の教えを受け、
高度な魔術制御を可能とする、”舞踏魔法”を完成させた。
— だが、私が大きくなる前に、愛を知る前に、二人は居なくなった。
父譲りの黒魔法の力と引き換えに、私は孤独になった。
生きるために冒険者になり、魔物を力でねじ伏せる。そうして、しばらく生活できるほどの報酬を得る。
クエストをこなすうち、私はいつしか”魔女”と呼ばれるようになった。
淡々と魔物を焼き尽くす私の姿は、まともな人間には見えないらしい。
嬉しい、悲しい。楽しい、辛い。
両親が居なくなってから、そんな感情は湧かなくなった。
私にはそんなものいらない……。戦いの邪魔になるだけ。
魔力を回復させる間、女は自分に言い聞かせた。
そよ風が、彼女の髪を優しく撫でる。
その心情とは裏腹に、その横顔は寂しげに見えた。
ーーただ一人、そんな”魔女”を眺め続ける男がいた。
「興味本位で例の”魔女”の戦いぶりを覗いてみたが……」
「今日の”舞踏”のパートナーは、あの悪魔、ね……。」
「仇をとってくれたっつーわけか。」
「ありがとな。」
休息を終えたらしい女は宝を回収している。その声が聞こえているはずはない。
そのつぶやきは、柔らかな光を湛えた満月だけが聞いていた。
第一楽章「孤高の魔女は、悪魔と踊る」
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私は仕事を終えて帰還した。
がやがやとうるさいグリダニアの冒険者ギルドはいつも騒々しく、あまり好みではない。
だが、ここに来ないと報酬がもらえないのだから我慢することにしている。
マスターのミューヌ、彼女だけは気に入っている。私が来ても顔色一つ変えず、いつも優しく接してくれる。そういう人種はこの世界には珍しい。
「ここにいたのか。」
“ギルド創設以来のソロ討伐”を達成したために、特別に色を付けてもらった報酬を受取り、さすがの私も気が緩んでいた時。
エールを両手に、慣れた様子で隣に腰かけてくるヒューランの男。
頬に特徴的なキズが入っている。金属鎧を纏った雰囲気はなかなかに渋く、街の女には慕われているらしい。
良い噂の無い私に話しかけてくるのはこの男ぐらいだ。
ジョブは戦士だが、特定のパーティーに所属せず、傭兵のようにいろんな依頼を受けている。
私より一回り上に見えるが、よくしゃべる男で、大した用もないのにこうして酒をおごってくる。
「今度は”お見事”、一撃ストライクだったな?」
「初めてお前の”魔法”をみた連中は泡吹いてたぞ。」
にやにやと私の顔を見ている。気恥ずかしさに顔を逸らし、渡されたエールをあおる。
この男、冒険者としての腕はそこそこ、といったところか。
いや、正確には腕はあるのだが、あまり難しい依頼には手をだしていない様子だ。
脛にキズを持つ冒険者は多くいる。昔何かあったのだろう。
余り人を詮索しないのはこの業界の不文律だ。
「なんであなたが知っている。」
ふと、疑問に思う。この男のスタイルはダンジョン最深部に行くようなものではない。
「そりゃあ。その場にいたからさ。」
飄々と答える。
「どうして。」
珍しいこともあるらしい。
「興味があったから、だな。」
いつにもなく歯切れが悪い。
「何に?」
「あんたに。」
「……。」
何がなんだかわからない。もしかして、からかわれているのだろうか。
「すまん。お前をからかうのが楽しくてな。」
私はいつにも増して無表情になる。
クロードは苦笑いしながら話し始めた。
「……最初は本当に興味本位だったんだがな。」
「奴、ディアボロスはな、」
「……ツレの仇だったんだ。あんな化け物、俺の腕じゃあどうにもならなかった、んだが……。」
「何処かの誰かさんがあっさり仕留めてくれた。」
「……心から感謝する。ありがとう。」
そう言って、男は深々と頭を下げた。顔が料理皿に付きそうだ。
「……。」
依頼を達成し、感謝されることはこれまでもあったが、今はそれとは違う。
なんだか……、居心地が悪い。
でも、悪い気はしなかった。
男が顔を上げる。
「……”先代”の魔女だ。」
ディアボロスの言葉を思い出す。
”—去ね、この前の”魔女”のように。”
「……あの野郎も言ってただろう。”魔女”はお前の前にも居た。」
「……。」
そうだったのか。黙って話を聞く。
「……アイツもとびきり強力な黒魔導士だった。しかも美人でな。」
「そういう人間は、大抵孤独になりがちだ。」
「……俺はそんなアイツをどうにも放って置けなくてな。」
「同じパーティに誘ったんだ。」
「だが……。あの禁呪だ。俺はアイツをかばえなかった。」
……アイツは”地獄”になんて落ちるわけがねえ、と一人呟く。
「……お前も、あの悪魔野郎に言われてたじゃねえか。気をつけろよ。」
そう言ったきり、押し黙る。
”—貴様を”地獄”に落としてやる……!”
今思い返しても嫌な言葉だ。
「……ええ。忠告、感謝する。」
しばらく沈黙が場を支配する。
男は遠くを見ながら、つぶやくように言った。
「……なあ、」
「俺とパーティー組まないか?」
「……唐突ね。」
「……お前が俺の過去を断ち切ってくれた。」
「俺がしょうもない依頼しか受けてなかったのは知ってるだろ?」
「俺は変わりたい。昔のように、仲間とダンジョンを駆けたいんだ。」
「…さっきの戦いを見ていて気づいた。魔法使い[キャスター]の例に漏れず、」
「あんたは近づかれると弱い。」
ちゃんと戦いを俯瞰で見ていたようだ。頭の巡りも悪くないらしい。
「次からは俺がかばうとしよう。」
「どうだ?俺たち、良いコンビになると思わないか?」
そう言って、右手を差し出してくる。
仲間を守るのに、特化した手。
ごつごつとしていて、触り心地は悪そうだ。だが、今の私には頼もしく思えた。
「……わかったわ。」
そう言って、手を取る。
「これから、よろしく。」
私の返事を聞くなり、男は表情を変える。
喜色満面に、ものすごく喜んでいる。
「よっしゃあ!!!」
おまけにガッツポーズまでしている。
「…………!?」
急に元気になったこの男に、頭が追いつかない。
「アンタに名乗ったことなかっただろう?」
「俺はクロードという。よろしくな!」
悪そうな笑みを浮かべている。
先ほどまで神妙な顔をしていたのは演技だったらしい。
「てめえら、よく聞け!! 俺はあの”魔女”を仲間にしてやったぞ!!!」
先ほどのしんみりした空気はどこへやら、やおら立ち上がり、ギルド中に聞こえる声で叫びだした。周囲の冒険者たちが、なんだなんだと好奇心を向けてくる。
“トラブルの気配”[酒の肴]を察知すると、いても立っても居られないのが冒険者という連中である。デリカシーなど欠片も無い。
「……。ファイジャ。」
ギャラリーに向けておもむろに呪文を唱え始めると、ひいい、と大の男たちがいっせいに引いていく。暴力沙汰などギルドでは日常茶飯事だが、今日ばかりは滑稽だった。
ふと、クロードを見てみると、……心底嬉しそうに笑っていた。
凍てついた心がすこし、溶かされるような気がした。
第一楽章「孤高の魔女は、悪魔と踊る」
おわり