帝国軍の飛空戦艦が目撃された――それは、ドマに訪れかけた平穏を打ち砕く報せだった。
「これで……大龍月亮門の障壁はどうにかなるはずだ」
シドから届けられた資料に目を通し、アルフィノは小さく息をついた。
安堵の言葉ではあったが、その表情は険しいままだ。
次々と降りかかる問題に追われるばかりの状況が、焦りとなって胸に重くのしかかっていた。
「忍の里からの急報があった」と、ヒエンが告げる。
「ドマの国境付近で、帝国軍の飛空戦艦が目撃された」
「ヨツユの奪還に動いたか、あるいは再侵攻の前触れか……」
ヒエンの言葉に、誰もが息を呑んだ。
「現地に赴き、帝国軍の出方を見極めたい」
ヒエンの声は冷静だったが、その瞳には鋭い決意が宿っていた。
「僕たちにも、何か役割をください」
アルフィノが声を上げる。
「ドマに危機が迫っているかもしれない状況で、ただ傍観していることなどできません!」
「では、甘えさせてもらおう」
ヒエンは頷き、アルフィノに人狼族のハクロウと協力し、町人地の見回りを任せる。
「拙者は……?」
ゴウセツが問うと、ヒエンは一瞬だけ目を伏せてから、静かに告げた。
「烈士庵に残り、ヨツユを守ってくれ」
「……承知つかまつった」
短く答えたゴウセツの声は静かだったが、その目には迷いのない覚悟があった。
「さあ、行こう。帝国の狙いを確かめるぞ」
ヒエンの言葉に、ユウギリが無言で深く頷く。
一行はカストルム・フルーミニスへと静かに歩みを進めた。
遠く、黒雲が空を覆い始めていた――。