あの長き戦いののち……静寂が訪れた。
ヤ・シュトラはいつもの落ち着きを崩さぬまま、しかし少しだけ声音を柔らかくして、私に問うた。
――エリディブスとの戦いの顛末を、と。
彼女は語る。
私が争いの中で見出したもの、それはただの勝利ではなく、彼の心の在処を掬い上げることだったのだと。
彼らにだって願いがある。それを「覚えていた」からこそ、争いを超えた意味があるのだと。
アルフィノは首をかしげ、戦いの途中で助けをくれた古代人について推し量る。
だがヤ・シュトラは、あえて結論を求めない。
「過去を明かす者、ときの者に非ず」――ロンカの諺を口にし、残された者に許されるのは「思い出を抱き続けること」だと告げた。
そこに駆けつけたのは、傷を負いながらも立ち上がったベーク=ラグ。
水晶公を案じ、ソウル・サイフォンを手にした彼の瞳は、老いてなお熱かった。
彼は語る。
水晶公が胸にしまいこんでいた「願い」。
それは、周囲のために押し殺してきた、彼自身のひとつの夢。
――いつか時が来たなら、しまった願いに向けて歩き出そう。
危険があっても構わない。願いは、夢は、挑むものだから。
その言葉を思い出しながら、ベーク=ラグは笑う。
「まったく、あんな青臭い想いを隠しておいて、老人ぶるなという話よ」と。
ヤ・シュトラは、ふっと微笑む。
「彼も魔具の中で面食らっていることでしょうね」
――その穏やかな笑みは、仲間の無事を信じる静かな強さに満ちていた。