『レオニア王国記』とは
Sayチャット溜まり場LS「Face to Face (通称F2F)」の雑談とSS撮影からの連想で始まった物語。
Bramaleさん原作の『レオニア王国記』に、LSメンバーがモデルとなり各人の個性を生かした「登場人物」として配置され、現在連載中。
詳しくはLS F2FリーダーLuis Seraさんの日記を参照ください。
→
https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/2326608/blog/3698990/ここでは第一王子アルザとその周りの人々とのある一日を書いてます。
ブラさん始め、たくさんの方の応援、ご協力に感謝しつつ公開します。
***
***
レオニア王国記 前日譚 アルザ編
まだ午前中だというのに太陽は遥か天高く、暦の上ではもう秋なのにジリジリとした熱気を一向に手放す気配のない夏の終わり。
遠く南国から取り寄せたという甘く高貴な柑橘系の紅茶の香りが蒸気と共に立ち上り、鼻の奥にスゥッと心地よく染み込んでくる。
レオニアブルーの美しい花々が染付された白磁のカップに注がれたその紅茶は、侍従長ブラマールが私のために特別に用意したものらしい。
忙しい毎日の中で唯一許された、自分のためだけの時間を紅茶と共に楽しむのが日課になっていた。
しかし今日はいつもとは違う。早朝から城内が慌ただしい。
ふと部屋の奥を見やると、色とりどりに包装され、鮮やかなリボンがかけられた沢山の箱が所狭しと積まれているのが見えた。
…コンコン。
「アルザ王子、失礼します」
王国侍従長ブラマールだ。
今日はいつになく忙しい様子で、こめかみにうっすらと汗が浮かんでいる。
「アルザ王子、そろそろご準備していただかなくてはなりません。今日は一年のうちで一番特別な日なのですから第一王子として恥ずかしくない立ち振る舞いを…」
誰彼となく身分問わず気軽に接し、勝手に城外へ出かけてしまうせいで私の教育を任されているブラマールの心労は絶えることがない。そのせいで何かあるごとに小言ばかり言っている。
ひとしきり私に注意をし終えると、ブラマールの目配せと同時に数人の侍女が恭しく大きな箱を抱えて入ってきた。
丁寧に布張りされ縁に美しいレースがあしらわれた箱が開けられると、中には鮮やかな赤と青の刺繍が施された純白の騎士装備一式が仰々しく納められていた。
「レディ達、ありがとう。今日も相変わらず綺麗だね。」
侍女たちに笑顔で軽くウインクをすると、若い彼女らは恥ずかしげに俯きながらクスクスと笑った。
「各都市から王族や貴族の紳士淑女の方々が徐々にお集まりになっています。時間になったらお迎えに上がりますから、それまでに着替えを済ませていただきますよう」
ブラマールがそう言い残し、侍女達を引き連れて部屋を後にしようと扉を開けると、黒い甲冑に身を包んだ男の姿が見えた。
私の直属の護衛、スパイラル・ピアサーである。彼も今日は特別に緊張した面持ちで、その傍らには最近入団したというツカサがこわばった表情で立ち尽くしている。
「ブラマール殿、本日の警護について打ち合わせしておきたいことがありまして…」
ブラマールが一礼し扉を閉めると私は再び静寂に包まれた。
今日は霊4月27日。
18年前、私が生まれた日だ。
*******
ふと窓から外を見ると、中庭でお付きのルイス宰相と共に花壇の花を愛でるマテウスの姿が見えた。
マテウスは私の2つ年上の異母兄である。思慮深く、白薔薇を思わせる高貴な雰囲気を持つ彼のことを私は憧れ、そして慕っている。
あの日ーーー
8歳だった私の朧げな記憶。
マテウスの実母、ローザが亡くなった日。
私はまだ死の本当の意味を理解できず、ローザの側で泣きじゃくるマテウスと、呆然と立ち尽くすルイスを少しだけ開かれた扉からただ眺めていた。
その私に気づいてルイス宰相が振り返ると、まるで業火を纏った刃物のような鋭い眼差しで私を捉えた。
ーーーーー!
胸の奥で何度となく現れては力づくで押しつぶしてきた感情が再び頭を擡げてくる。
母イルミナは私を身籠ったことで保守派により第一王妃として迎えられ、国の体制が変わった。
マテウスは第二王子となり、やがて第二王妃ローザは哀しみの死を遂げた。
『私は生まれてくるべきでは無かったんだ…』
私の出生当時のことについて、ブラマールも両親も多くを語ってはくれない。
「生まれてきたときのこと?アルザは変なことを気にするのね。父様と母様の愛の証なのよ。あなたが生まれてきてくれて本当に良かった」
母様はいつもの暖かい笑顔で答えるばかり。
... 本当に僕は生まれてきてよかったの?母様…
***********
…コンコン。
再びノックの音と同時に正装したブラマールが入ってきた。
「アルザ王子、全て準備は整いましてございます。皆様お待ちです。王子のご誕生を祝おうと方々からお集まりですよ。今日は第一王子らしい振る舞いを…」
ブラマールの言葉を遮るように、
「わかった、わかった。心配しなくてもちゃんとやるさ」
祭事用の宝石が施された剣を腰に差し、会場へと向かう。
ブラマールの指示で祝賀会場の扉が開けられると、華やかな衣装に身を包んだ紳士淑女の視線が一斉に私に向けて注がれる。
割れんばかりの拍手。
熱気の中、中央の通路を会釈しながら歩き、席に向かう。
私は望む望まないに関わらず、第一王子として生まれた。
そう、第一王子として。
高座に着くと、右手を挙げ、拍手を静める。
「今日は私のために集まってくれてありがとう。嬉しいよ。皆がこうして祝ってくれるなんてね。私の誕生を祝ってくれる全ての人に感謝を。本当にありがとう」
今は皆の期待に応えなくてはならない。
たとえそれが自分の望むことと異なっていたとしても…。
Fin