ヒカセン「知っているぞ!暗殺者か何か知らねえが、この森をうろついてるそうじゃねーか!」 グリタニア黒衣中央森林にて、魔物達が騒いでいる。
大きなネズミの姿をした魔物、キキルンの静止をものともせず、その集団は騒ぎ立てる。
ヤ「そんなヤローに殺られるくれえなら、オレらがやってやるってんだよ!」 そのあまりにも異様な光景に触発された魔物達が、次々と集まってきて。まるで森そのものが蠢いているかのようだった。
ドオン!! 轟音が響き渡り、一瞬にして静寂が訪れる。大きく力強く撓る触手の一つが、大木をなぎ倒した音だった。
その触手の主は静かに、そして淡々と話し始めた。
「ワシは、モルボルという者じゃが」
名を聞いたものは恐れ、すくみ上った。
聞いたことがある、黒衣森に潜む伝説の魔物。この騒動はこんな怪物を引きずり出したというのか。
歴戦を思わせる巨大な体に幾重もの触手と棘を有し、声質からは辛うじて老体であることが分かった。
「現在1人、この森に人間が入っとる。おたくらの仲間は何匹かはすでに殺られた。」
「仮にぬしらがそれぞれ武器を持っとったとしても。ワシならこの場で7秒以内に全員状態異常にできる。」
「敵も似たような力量じゃ。」
静寂のなか、息をのむ音だけがかすかに響く。
伝説の神獣、その口より混沌の息を吐く。息に触れればたちまちあらゆる災厄が我が身に降りかかるであろう。
魔物達の間に伝わる伝承だと思っていたが、モルボルと名のる老体の物言いに、それを疑問に思うものなどいなかった。
「わかったなら黙ってそこに居れ。死にたいのなら別だがの。」 反論する余地もなにも与えることのない圧力、それがモルボルにはあった。
森の奥深く入り組んだ木々の根元に、小さな魔物の死体が横たわっていた。
キキルンは死体を見つけると、手慣れた目つきで分析を始める。
「どうじゃ?」
巨大な体に似合わないほど静かに、その老体はさも簡単に木々の闇から声をかける。
「背後から一撃…見事だな。殺気もほんの一瞬で消し、わずかな余韻すら残さない。」
キキルンもまた、森の強者と呼ばれている者。そんな彼が珍しく称賛とも取れる言動をとった。
「ふむ…しかたない。”臭い息”を使うか、アレはMPを使うからしんどいんじゃが。」
「南森の湿地帯から始めて、北に追いつめるとしよう。」
そう言うと二匹は歩き始める。
さもこれが当然というように、森の脅威にいつもこの2匹で対処してきた。これからもそうするだろう。
「この森だと半径2キロ以上あるぞ?モルボル大丈夫か?」
「アホか、本気を出せばリムサロミンサまで届くわい!」 若造の軽いからかい言葉に、いささかモルボルはプライドを傷つけられ声を荒げる。
「やれやれ、全くもって割にあわん仕事じゃて。」
言葉とは裏腹に、老体は嬉しそうに呟いた。
北森の更に北。そびえたつ1本の木の根元に、ソイツは立っていた。
というわけで青魔導士レベル60になりましたw