私は以前に「ハルオ君」という人種に出会ったことがある。確か……、あったあった。これだ。
――レイジ・オブ・ハルオーネの憂鬱。
(
http://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/2218456/blog/608251/ )
そういう名前を付けて、日記にしてある。
その時のことを思い出すと憂鬱になる。彼はあの後一体どうしたのだろう。どうなったのだろう。あの剣捌きでは冒険者稼業を続けていくのは難しいだろう。その後、自分の剣の歪さに気付いてくれているのであれば良いのだが……。
要約すると、彼はレイジ・オブ・ハルオーネしか扱わない剣術士だったのだ。ファストやサベッジを使わない剣術士だったのだ。……聡明なる読者諸君であれば、それがどういう惨状を引き起こすかは、容易に想像がつくと思う。
私はヒーラーで参加していた。すでにタンク職を限界まで上げった後のヒーラーだったからスキルは十分。それにダンジョンはトトラクの千獄だった。つまり、ハルオ君が居たとしても、他のメンバーがしっかりしていれば、何とかクリアは可能だったのだ。
……だが、今回はそうはいかなかった。
場所はサスタシャ侵食洞。但し、楽な海賊討伐ではない。クラーケン討伐に向かったサスタシャ侵食洞だ。パーティはナ忍黒白。今回の私は忍者での参戦だった。入ってみると、どうやらナイトは初見らしい。
思いっきり、sayで。「初見です。よろしくお願いします」という発言。sayで。
sayで、というところは大事である。
大事なので何回でもいう。sayだったのだ。我々はこの時点で、少し不安感を抱いたのではないか。加えて、ナイトのHPは6600程度だった。最前線で大迷宮バハムートを攻略している冒険者のHPではないが、ともあれ、参加ILは満たしているのだから、クリア出来ないという理由にはならない。ここでHPは瑣末な問題だ。どうやらレベル50のクラスはナイトだけ。後はほとんど職についてもいない。冒険者になってまだ日も浅いのだろう。
それでも、このサスタシャ侵食洞までは辿り着いているのだ。基本的な部分は問題ないであろう。と、誰だってそう思うはずなのだ。そう……、いや、信じたかっただけなのかもしれない。
まず、フラッシュは撃ってくれていた。これはいい。
忠義の盾もしてくれていた、と思う。
だが、タゲは非常に跳ねてしまう。これはよろしくない。
ここでDPSならこう考えるはずだ。「HPも低いし、IL差が大きいから少し加減をしよう」と、こう考えるはずだ。
実際、私も黒魔道士も少しブレーキをかけた。ギアを落とした。
少しづつナイトに戻っていくヘイト。
白魔道士のケアルの対象は私か黒魔道士に厚かった。
スタン目当てのホーリーを数回。
そして、白に向かう敵。
ヘイトバーを見て、白に向かった敵からの排除に切り替える。
こちらに来てしまった敵に関しては、残影や喉斬りを駆使して捌いていく。
こんな具合の戦闘を数回繰り返した。
「フラッシュを多めに使ってください」と言った。これに対する反応は無い。フラッシュの頻度も変わりはない。
……少し、私は彼を観察することにした。
戦闘開始時には突っ込んでいってフラッシュする。
ロブは投げない。
時折思いついたかのようなサークル・オブ・ドゥーム。
……戦闘をこなしながら、私は彼をじっと見た。彼の挙動を。
彼の挙動が、どこかおかしい。
ファストブレードは? ファストブレードを使っているか?
サベッジは?
レイジ・オブ・ハルオーネは?
使っているか? 連続で、コンビネーションで使っているか?
稀にレイジ・オブ・ハルオーネの構えで剣を振っている。ように見える。
が、それ以外の、その剣の振り方は、極々基本的なオートアタックではないか……!?
不味い……!
これは不味い……ッ!
ターゲットが跳ねるのも当然だ。ヘイトを稼いでいないのだから。オートアタックが当たってヘイトバーが伸びるものの、それだけだ。
「コンボを入れていますか?」と聞いてはみたものの、返事はない。
黒魔道士のファイアで一匹目の敵が倒れる。ナイトが殴っていた敵だ。
相手をしていた敵が倒れ、彼は次の敵に、殴りかからない。
納刀をする。
あたりをチョロチョロと、ミニオンのように走り始める。
だが、まだ他の三人は戦闘中だ。
敵前逃亡か? だとしたら銃殺ものである。
敵が全て倒されると、一応洞窟内を進みはする。
あれか。ギルバートか。かくれるか。
戦闘を行わないナイト。
斬新すぎて涙がでてきてしまう。
万事がこんな調子だった。
フラッシュはするものの戦闘開始時の一回だけ。ドゥームはするもののリキャスト毎ではない。そもそもヘイトコンボが破綻している。コンボどころか戦闘中に剣を仕舞ってうろちょろする。うろちょろするがこちらの問いには反応しない。
声に出しはしなかったが私も、黒魔道士も、白魔道士も、こう思っていただろう。
「これはダメだ」と。
それでもなんとか三人で頑張ってカーラボスを撃破し、3体のラミアも排除した。
道中で、堪えきれなかったのだろう。白魔道士が呟いた。
「これ、元船長勝てるのかな」と。
答えは、ムリだった。
勝てるわけがなかった。
元船長の銃撃が降り注ぎ、我々は敢え無く全滅の憂き目にあった。
全滅し、入り口に叩き返された我々三人は、一応、元船長の手前まで走って戻ることにした。
あれ? 三人?
ナイトは? 入り口で何してんの?
おーい、何してんの?
/pでパーティチャットに出来るから、それで話して?
おーい、聞こえてる?
なんで動かないの?
ねえ、なんで?
なんで棒立ち?
「……投票除名しましょうか」
――数分待ったもののナイトが動く気配はなく、その問いに反対する者はいなかった。
その後、新たな戦士を迎えた我々は、どこも苦労すること無く、あっさりと元船長を追い払い、ゾンビの海賊どもを蹴散らし、巨大なクラーケンを討伐することが出来た。
ああ、書いていてわかったが、普段であればこの二行で済むのだ。……つまり、普段よりは冒険に満ちていたと言えよう。
いや、言わないから!
ホンット、ありえないから!
むしろ、そんな冒険御免だから!
いやいやいや、だってさ、サスタシャだよ!? ハードサスタシャ!
ハードサスタシャまで来てて!
武器はしっかりコルタナ・ゼニス&ホーリーシールド・ゼニスで!
一応ウェザードではあるものの部分的にはノクト装備してて!
それ以外は神話装備ではあったものの、それを揃えているっていうことは、神話なり戦記なり稼いでるってことで!
それがご覧の有様だよ!!
コンボ! 撃てよ!
納刀! するなよ!
反応! なくなるなよ!!
ああ……。逸材って、居るんだなあ。
彼はここまで、どうやって歩んできたのだろう。
どうやって進んできたんだろう。
フリーカンパニーだとかにも在籍してるっぽいんだけど、彼の周りの冒険者は、彼を導いてくれるような冒険者はいなかったんだろうか。出荷してあげる、ではなく、気付かせて成長させてあげるような冒険者は、いなかったんだろうか。
いなかったんだろうなあ……。