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I am a Boy 【8】 -Fast Walker編[5] -

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※当日記はRPプレイヤーによる投稿です。
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Fast編の最後です。

今回SSの関係で文字ばかりです。
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ひでぇ目にあった…
ボソッと呟くファストの横で、シカーダはフンと鼻を鳴らした。

ファストが背を打ちつけた巨木に二人腰掛け、ポツリポツリと会話をする。
ここはやはりファストの故郷だった。

ファストが語る過去。それはシカーダが見たものとは全く違っていた。
シカーダは急かさずファストの話したいテンポに任せながら、自分が見た過去との共通点を探し続けていた。
集落が消滅した。住人が総て命を落とし、火を放たれた。そこは事実なのだろう。
だけど…

うん…うん…と相槌を打ちながら、背もたれにしている巨木を見上げる。
もしファストが言う過去が本当なら、何故木の精霊はこんなに穏やかなのだろう。シカーダはひそかに首を傾げた。

「おや…こんなところに人が居るとは、珍しいねぇ…」

間延びした声が二人の会話を遮ったので、ファストとシカーダは同時に声の主に振り返った。大きなカゴを背負い、いかにも農民と言う井出たちの、腰の曲がった老婆が目を細めていた。その手には野草が握られている。
ちょいとごめんよ…
草を掻き分けながら老婆はゆっくりと近づいてくる。ファストの横を通り過ぎ、巨木の根元に手にしていた野草を置いた。少しの間黙ってその野草を見つめ、やがてしゃがんで優しく手を合わせる。
疑心暗鬼になっている二人とは対照的な穏やかな祈りの姿だ。二人は戸惑いがちに目を合わせ、何も言えず黙って老婆を眺めていた。
やがて老婆が優しい笑みで顔を上げると、ようやくゆっくりと二人の顔を交互に見つめた。

「…ここで人に会うだなんて、どのくらいぶりかねぇ」
ふぅと息をつき老婆は首にかけている布で額の汗を拭いながら言った。今日は暑いねぇと言うようにさらりと言うその言葉に、ファストとシカーダは気まずい顔で目を合わせる。
「おばあちゃんは、この辺りの人なんですか?」
ファストから目を逸らしシカーダがそう話しかけると、老婆も同じ様に巨木の根元に座りながら、そうだよ、と息をするように言う。
「ほら、そこの道の奥の茂みのもっと奥に、家が見えないかい?」
顎で茂みを指す老婆に釣られてその方向に目を凝らすと、確かに粗末な屋根が幾つか見えた。あんなところにも集落があったのかと、シカーダは思う。
ファストは首を傾げていた。
「まぁ…もうジジィババァしかいないから、うちの集落もいつかは無くなっちゃうんだろうねぇ。寂しいもんさ…」
ため息混じりに言う老婆の声は穏やかだ。
「『うちの』?」
すかさず口を挟んだファストの声は棘を含んでいた。視線で嗜めるシカーダを他所に、老婆は気にならなかったのか、ふふふと笑いながら小さく数回頷いた。
節くれだった指、痩せて曲がった腰。皺くちゃの顔に、ニッと笑うと残っている歯が殆どない。その姿から、老婆が満足な栄養を得られないまま、身体を酷使して生きてきた事くらい簡単に想像できた。
この森で、生きていくために田畑を耕し、水を汲み、木の実を拾って静かに暮らし続けたに違いない。歴史が体全体に刻まれているようだ。
「…ここにも集落があったんだけどねぇ…」
ふ…と視線を落とし、寂しそうに老婆が言う。ピクリとファストの肩が動いた。

ここにあった集落はまだ若い人が多くてねぇ、子供の声が聞こえてそりゃぁいつもいつも、にぎやかだったよ…
ただ何故かこっち側は茂みの向こうの私の集落とは違って作物が実りにくくてねぇ…だから時折、私の集落の収穫物と、ここの集落の人が狩った獣を交換していたんだよ…
だけどここの老人どもは何故か、作物を貰うことを恥じていてねぇ…いっつも影でコソコソ、周りに気付かれないように取引したがったもんだよ…お互い様なのにねぇ…

ファストが集落に帰るときに見た取引は、作物の取引なのだろうとシカーダは思った。チラリとファストの表情を盗み見ると、ファストは遠い目をしている。
地面の小石を蹴りながら老婆は時折小さく笑う。それは懐かしい思い出に浸っているからなのか、やがて優しい目のまますっと空に視線を移した。
暢気なトンビの鳴き声がする。

…ここの集落が疫病にやられたと聞いた時は、驚いたよ…

思いがけない老婆の一言に、二人の心がざわついた。空から視線を落とした老婆は悲しい顔をして、じっと地面の一転を見つめている。
「…疫…病…?」
震える声でそういったのはファストだ。ああ…静かな声で老婆は頷いた。
「…疫病で集落が壊滅状態だと知らされた時は、もうどうすることも出来なくてね…。…私らに遠くに逃げろと…血を吐きながら…大声で叫び続けていたあの娘のことは忘れられないよ…。あんな時ですら私らを気遣って、本当に遠くから…大声で…」
疫病にやられた集落は焼くしかなくてね…

老婆は黙り込む。
皺くちゃの節くれだった手に、ぽとりぽとりと滴が落ちているのを、シカーダは見ないふりをした。

長い沈黙が3人の間を流れていった。
気持ちよく吹く風が巨木の葉を揺らす。サラサラと音を立てる葉は無邪気だ。
「…俺は、ここにあった集落の人間が神降ろしに関わっていて、子供をさらってまで生贄を立てていたから、制裁を受けたと聞いているぞ…」
しゃがれた声でそういったのはファストだ。へ? と素っ頓狂な声を出した老婆は目を丸め、ファストを振り返る。
ポカンと口をあけてファストの横顔を眺めた後、しばらくたつと今度は大声で笑い出した。
「何を言うさね」
あっはっはと笑いながら老婆は首にかけた布で目元を拭う。馬鹿なことを。続けてそういうと、また優しい顔でボンヤリと空間を眺めだした。

「…むしろ、その逆さ。ここの集落の老人達は、親を亡くした子や捨てられた子達を受け入れて、金も無いのに必死に育てていたよ…」
再び風が、巨木の葉を揺らした。


集落の住人達は、その後戻ってきた老婆の集落の人達によって、この巨木の根元に丁寧に埋葬されたそうだ。
その埋葬時には話を聞きつけた、この集落出身の者達も駆けつけ、手伝ったという。
「時間が経ちすぎて骨だけになってたけど、ちっとも嫌じゃなかったよ…」
その言葉は本当だろう。現に、老婆はさっきも野草をこの木の根元に手向け手を合わせていたのだから。


「…おばあちゃんは、嘘は言っていないと思うよ…」
微笑むシカーダは巨木の幹に手を添えながら言う。ファストはまだ理解し切れていないようで、混乱した表情のまま黙りこくっていた。
何でだよ…
ようやく声を出したファストの声はしゃがれている。ようやく一つ一つの点が線で繋がったシカーダは、ふ…と小さく笑った。
「ずっと変だと思ってたんだけどさ…、僕が見たいっちゃんって、腰に剣を下げてた。タブン剣術だよね」
は? ファストはそれがどうしたといわんばかりに怪訝な顔を向ける。シカーダは相変らず木の精霊と対話しながら続けた。
「いっちゃんが言う過去のいっちゃんは、暗黒騎士だよね。…暗黒騎士って、そんなすぐになれたっけ」
はっとしたファストが、口を手で覆った。目が左右に揺れているのは、必死に脳のニューロン群を働かせ、奥底に沈んでいる記憶を呼び出そうとしているのだろう。
そんなファストを尻目にシカーダは木の精霊と対話を続けていた。木の精霊は早く早くと、しきりにシカーダを急かしている。ちょっと待てよと呟きすぅと息を吸い込むと、風の向きとは全く違う方向に、シカーダの髪が揺れた。
「…ここさ、たぶん元から酷く土地が淀んでいたんだと思うんだ。だからこっち側は作物が実りにくかった」
目だけチラリとシカーダに向けたファストは、「淀みって?」と小さくシカーダに尋ねた。んー…。シカーダは首を傾げる。
「自然の属性が歪んだ状態…判りにくいだろうけど。ここに長く住んでいるって事はずっとその淀みの影響を受け続けるってことになるわけで、疫病の元はそれなんじゃないかなって」
でもさ…
囁くように続けるシカーダの手が少しずつ光を帯びていく。ファストはそんなシカーダをじっと見つめた。
「…今、ここって凄く草が茂っているよね。作物が実りにくいと言っていた割には、とても不自然だ」
言われて確かに、ファストは改めて集落跡地を見渡した。巨木の根元こそ陰になり草は少ないが、それ以外の場所、畑があった位置や家があった場所はまるで緑の草原だ。風が吹けばすぐに砂が舞ったあの頃とは全く違う。
でも、確かにここが故郷だ。ファストはまた口に手をあてた。
「…タブン。タブンだよ? こんなことが起き得るかなんて判らないけど…」
ふわふわと舞うシカーダの髪の揺らぎが激しくなり、巨木を中心に光の粉が降り始めた。ファストはその神々しい光景から目が離せなくなる。
「…あの日、いっちゃんは、みんなのことを思うあまり…土地の淀みを総て身体に飲み込んでしまったんじゃないかな。そこに、みんなのことを守れなかった負い目が重なって、いっちゃんの記憶を歪めた」

光の中に、懐かしい景色が蘇る。

『気をつけるんじゃぞ』
長が泣きながらグリグリとファストの頭を撫でる。
『嫌になったら、明日にでも、すぐに帰って来るんだぞ!!』
となりの爺さんが泣きながら言う。馬鹿なこと言うんじゃないよ! お婆さん怒られ、だってよぉと情けない声をあげた。
『これはみんなからじゃ。大事に使うんだぞ』
2軒隣の爺さんが差し出したのは真新しい装備と袋いっぱいに詰まった貨幣だ。ファストは目を丸め、一人ずつの顔を見渡した。
みんな、泣きながら、優しく笑っていた。元気でな…元気でな…暖かい心の数々に、決心が揺らいでしまいそうだ。
涙ぐむファストを母親が優しく包み込む。
「ファストは世界一、強くて立派な、冒険者になるって、母さん知ってるから」
お金に困ったらコレを売るといい。色とりどりのクリスタルが詰まった袋を長が差し出す頃には、ファストは泣きじゃくっていた。
大好きだった。この集落が、みんなが大好きだった…

ファストの頬にいく筋もの涙が流れた。
こんな大事なことを忘れていただなんて。あんなに温かく見送ってもらったのに、俺は…

ふぅと、シカーダが優しいため息をつく。
隣の集落に命を削って危機を知らせたのは、ファストの母親だったのではないかと思う。自分が見た幻影で唯一生きていたのは、ファストの母親だったからだ。
きっと正義感の強い女性だったのだろう。呆然と幻影を見つめるファストの横顔を盗み見て、ファストの性格は母親譲りなのかもしれないと、そっと思った。

「木の精霊は、いっちゃんが帰ってきたことを喜んでいたみたいだよ。会わせて欲しいと煩くて、さ」
シカーダがそう声をかける頃、ファストは子供のように泣きじゃくっていた。
抱きしめたい。だけど幻影のみんなに触れるなんて出来るはずもない。それでも…

手を伸ばし触れようとする。
その手に、たくさんの光の粉が集まり、一つの大きな塊になった。
その塊を、ファストはぎゅっと握り締める。

「きっとね、みんな、いっちゃんの帰りをずっと待っていたんじゃないかな。心配だったんだと思うよ」

わぁぁとファストが声を上げて泣いた。

キラリと何かが光ったような気がして、シカーダは目でそれを探した。
「そんなイタズラは、ダメだよ」
優しくシカーダは二人を取り囲む無数の命たちに話しかける。
ちぇっと舌打ちするようにその光は一度だけ大きく瞬き、すっとその姿を消した。

もう今のファストには、あの日失くした初心者用の剣なんて必要ない。
総てを受け入れたファストの涙は絶望に叫んだあの日のそれとは違い、とても純粋な愛の涙なのだから。


<Fast Walker編 終>
*****************************
長くなりましたがファスト編が終りました。
通勤中の電車の中でスマホをこねくり回しながら書いていたので、文体にまとまりが取れなかったり
到着したいラストまでドンドン迂回してしまったりで何度も書き直しました。
の割にはこの完成度(涙)。普段感情をあまり使わないから、よくないなと改めて。

闇ファストのシーンはあんなに暗く長くする必要がなかったなぁと、今更ながら反省…
コメント(4)

Cicada Chicada

Mandragora [Meteor]

ファスト編終了お疲れ様ですー。
希望のあるエンディングで良かった!( ´ ▽ ` )ノ
シカーダさん出ずっぱりだと思ってたけど、まさかの探偵役だった!w

わかったこともあるけど解明されない謎もまだたくさんって感じ?
リンさんの書く話はちょっと暗めだけど引き込まれますねー。

続きも楽しみですねー。
私も書きたくなってきたから書かなきゃー

Bambina Bamboo

Valefor [Meteor]

コメントありがとうです!
投稿しちゃってから、書き忘れていたことがいくつかあることに気がついたのですが、全部詰めちゃうと本当に長くなってしまうので
謎の一部は別のお話に持っていこうかと思ってます!

霊災を挟んで冒険者と一般人の生活両方を考えた時どうしてもそこに「喪失」という言葉が浮かんで全体的に暗くなってしまいますね。
やがて笑える未来に向かっていけたらなと思います。

シカさんが角尊化していっている(笑)

Khai Freiheit

Gungnir [Elemental]

どうしても、霊災を挟んだり絡めたりすると話がどん底方向にまっしぐらなんだよね。
なのでその雰囲気の打開としてうちの話ではあの父ちゃんを放り込んだんですが。
あと、実はこっちのツヴァイくんにも秘密があるんだぜ(笑)
と、こちらの話は置いといて…

うん、シカさんが聖人だw

Bambina Bamboo

Valefor [Meteor]

わ!返信が遅くなってごめんなさい!
どうしても14の二次創作だから~とか考えちゃったけど、あまりマジメにそこを組まなくても良かったのかもなぁとかちょっと思い始めてますw
軌道修正も難しいからこのまま進むさ!

ツヴァイ君の秘密。きになるにゃ・・・
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