
異世界の詩人 : 君がこの世界で見てきたことを聞かせてくれ。
僕の創作意欲を掻きたてるような、劇的な体験談だと嬉しいよ。
異世界の詩人 : ウォーリア・オブ・ライト……つまり「光の戦士」か。
それは是非、お聞かせ願いたい話だね。
異世界の詩人 : ふむ……あのとき、塔の上でそんなことが……。
ずいぶんと複雑な背景を持つ戦いじゃないか……。
異世界の詩人 : つまり君は、エリディブスを倒すと同時に、
長きに渡って人の命を脅かしてきたアシエンという存在とも、
ひとまずの決着をつけたわけだ。
異世界の詩人 : それによって救われた者、報われた者は少なくないだろう。
脅威の打倒なくしては、人々や君の仲間に、
そして君自身にも、健やかな今日はなかったのだから。
異世界の詩人 : ……一方で、だ。
どんな悪であろうが、敗れた側にも想いがあったはずだ。
異世界の詩人 : 彼らの敗北と涙の上に手にした平和は、
果たして本当の平和なのか。
もたらされた幸福は、真の幸福なのだろうか?
異世界の詩人 : ……これは、とても難しい問題だよ。
異世界の詩人 : 僕は哲学者でも為政者でもなく、詩人だからね……
もっと身近な、そう、恋にでも例えてみるとしようか。
異世界の詩人 : ふたりの人が同じ人物に恋をしたら、どちらかは実らない。
両者の想いに善悪や優劣がなくとも、叶わない方がある。
異世界の詩人 : だからこそ悲しみは絶えないし、
僕たちは何度でも、敗れた恋を酒場で歌うんだ。
異世界の詩人 : では、悲しみを生んでばかりの恋というものを、
いずれ人が完全に捨て去るかといえば……さて。
そんな日がくるとは、ちっとも思えないね。
異世界の詩人 : 人は恋をし、その先に幸せな結末を求めて足掻きつづける。
ときに悲しみに打ちひしがれ、後悔に苛まれるとしても、
焦がれることを、望むことを、やめられなどするものか。
異世界の詩人 : そう……誰かを好きだという気持ちは、
どんな理屈よりも疾く、強く、君を突き動かし、
だからこそ君をたくさん傷つける。
異世界の詩人 : そうして傷つきながら勝ち得た恋は、
慈しみ、大切にするといい。
いかなる嫉みにも、その輝きを曇らせる必要はないんだ。
異世界の詩人 : 逆に、敗れてしまったのならば……
こみあげる無念は、確かに君が愛した証。
君にしかわからない、君だけを焼く炎だ。
異世界の詩人 : それを無理に消そうとする必要はない。
燃えて、燃えて……あとに残った真っ白な灰が、
今はまだ知る由もない「何か」になることもあろうさ。
異世界の詩人 : ははっ、詩人の言葉なんてそんなものだよ!
素面で吟味されちゃあ困る。
異世界の詩人 : それはともかくとして……
「光の戦士」と「闇の戦士」の対決というのは、
なんとも心躍る題材じゃないか!
異世界の詩人 : よし、今回はその激闘の部分を抜き出して、詩にするとしよう。
より派手で過激な武勇伝としてね!
異世界の詩人 : ふむ、こんな感じかな……。
彼方の英雄……幻光を纏いて……闇をもたらせし者と…………