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レオニア王国記-前日譚- 1

公開
『レオニア王国記』とは
Sayチャット溜まり場LS「Face to Face (通称F2F)」の雑談とSS撮影からの連想で始まった物語。
Bramaleさん原作の『レオニア王国記』に、LSメンバーがモデルとなり各人の個性を生かした「登場人物」として配置され、現在連載中。 
Read more>>『レオニア王国記』とは?(LSマスターLuisSera日記に飛びます)


普段あなたが使っている そのFF14キャラクターが、もう一つの空想世界「レオニア」に登場したら…?



そんな想像から、派生した物語のうちの一つ。

Ramuhたまり場sayチャットLS『F2F』で語られた、古き書に記された王国の物語、『レオニア王国記』。その前日譚。
twitterで先行公開中の小説をLodestone向けに転記したものです。内容は同一となります。



                 

レオニア王国記 前日譚
                 




 タイガルド王国によるレオニア侵略に端を発した二カ国間の戦争は、劣勢と見られたレオニアの越境地帯で起こった『レオニアの野獣事件』により終結した。


 この事件で主要一大隊を失ったタイガルドは、和平の証に、いくつかの自国に不利な条件と、その最たるものとして、半ば人質同然に自国の姫をレオニアへ嫁がせる申し出をする。

 6年に及ぶ戦いに消耗しきっていたレオニアはこれを承諾。


 レオニア第8代目となる若き王、レオニダスと、タイガルドの月夜花と称されるローザ姫が、ひと月の後にレオニア城で婚姻の儀を執り行うこととなる――





***



 塔の大きな窓からは、元居たタイガルドに比べ白んだ朝日が差し込み、肩口の開いたドレスに身を包む姫の褐色の肌を輝かせている。
 王の命令で、自身の意思でこの部屋から出ることは叶わない姫の要望で、外が見えるようカーテンは常に開け放たれたままだ。姫は実質的な幽閉状態にある。
 
 タイガルドから連れ添うことを許された従者は、たった一人だけであった。
 当然女性をという声が多い中、終戦直後、不安定な情勢下での婚姻による危険から姫を守るために、見た目に反した闘いの心得があり、姫からの信頼も厚い者という二つの条件に合致する従者として、秘密裏にルイスが抜擢された。

 姫に連れ立つ従者の素性は、姫の安全のために特秘事項。
 ルイスは戦乱の中生死不明として扱われることになり、その点でも、孤児である出自が都合に良かったのだろう。
 勅命を受けた時、身に余る光栄にルイスは初めて、孤児であった自分の命運に感謝し――体を震わせ、改めて姫の御身を生涯にかけて守ることを誓ったのだった。

 尤も当然ながら、おかしな謀をせぬようにだろう、ルイスの他に一人二人はレオニアの執事が同室にて目を光らせている。今日の監視役は、ルイスに仕事の大部分を指導しているブラマールだ。年は30を過ぎた辺りか、顎髭を蓄えた厳つい外見。ルイスが顔を見た執事連中では中堅どころといった役割だろうか。ただし、執事服の腕周りは明らかに常人のそれではない。

 幸いなことに、その腕っぷしをルイスが目の当たりにすることはいまのところ、ない。それどころか、つい先日までは敵国だったタイガルド出身のルイスに対して、ほとんどの者がキツイあたりをする中にあって、ブラマールは不思議なほど、他の部下であるレオニアの者たちと平等に裁量し、厳しくも温かい評価をしてくれる。

 実は彼が付いている日が一番、姫もルイス自身も寛いで過ごせているかもしれない。信用ならぬとばかり、ルイスと姫の間に立って仕事を奪おうとする他の執事と違い、ブラマールだけは壁際に控え、何か判断を求められるでもなければ、じっと姫とルイスのやりとりを監視――いや、見守っている、という気遣いすら感じられるのだ。

 婚姻までの短い期間に、レオニアの王妃となるためのすべてを叩き込まれる姫。そのお付きの者として姫に恥をかかせるまいと、日常の業務の他さらに睡眠時間を削り、必要な知識のありったけを詰め込む生活の中で、ルイスにとって、朝日を浴びながら静かに食事を摂る姫を見守られる、この朝食の時間のみが何よりの褒美であった。

「こちらの食べ物にも慣れてきたわ」
「それはようございます」
 食後の紅茶を注いで、ルイスは配膳を下げにかかる。最初は味がしないと残されがちだったパンも、半分ほど食べられている。レオニア自慢だという小魚のペーストはまだ苦手なようで、パンでひと撫でした筋がついただけで残されてはいるが。

 姫が王との接見が叶う場は多くて3度用意されていたが、半月が過ぎた今、そのうちの2度の機会は既に失われていた。ルイスはおろか、姫でさえ、もうすぐ夫となる者の顔は絵描きでしか知らず、声を聞いたこともない。もしかすると婚儀までこのままかもしれなかったが、特に不満など上せるべくもない。政略結婚などそのようなものだ。
 接見の機会が潰れたという連絡の伝令は、朝食時、その日の予定を姫に伝えるルイスの職務である。そのたび、安堵とも落胆ともつかぬ心持ちに姫の肩が震えるのを知るのは、ルイスだけかもしれない。



 艶やかな褐色の指先がカップを持ち上げる。一挙手一投足に姫の不調がないか、神経を研ぎ澄まし見つめていると、姫の結い上げた紫鳶色の髪に差した櫛に目が止まる。
「姫、恐れ入ります。櫛が少し曲がっておいでです」
 グローブを嵌め直し、そっと近寄り確認する。黒曜と金の装飾が絡む、蝶を象ったヘア・バレッタ。姫がまだ幼い頃の誕生日、父であるタイガルド王シルベウスより贈られた、姫の宝物の一つだ。
 了承を得て、真っ白なグローブの掌に取り広げると、差し加減で曲がっているのではなく、細く捩じった細工部分が歪んでしまっていることが瞭然だった。
「ああ…馬車で揺られている時に、落としてしまったからかしら。揺れも酷かったから」
 姫がタイガルドから持ち込んだ品は、そう多くはない。その中でも何年もを共にしたお気に入りの品が傷んでいると知って、姫はため息を滲ませた。
「細工師に、修理を申し付けましょう」このレオニアに知り合いなどなく、タイガルドの金細工ほど腕の良い職人がいればよいのだが――その不安は、胸の内に仕舞い。

 姫の表情に見えたかと思った陰りは、すぐにかき消え、窓の外を見つめた目元は懐古に和らいでいる。
「蝶たちは元気かしら。薔薇園も――今頃は蕾をつけ始めている頃ね。まだ1ヶ月も経っていないのに、もう懐かしいだなんて、いけないわ」
 思わず小さな弱音が零せるのも、ルイスの他の同席者が、変に口を挟まずにいてくれるブラマールだからこそであろう。




 今も瞼に浮かぶ、出立の前夜。

 姫は父王から贈られた薔薇園を訪れ、可愛がっていた蝶にも別れを告げた。
 その姿は正に『月夜花』そのもので、今生ならざる美しさと、次にまたタイガルドの地を踏み戻れるのは何時になるやもしれない悲しみを思えば、ルイスは胸を刺されるような心地で見つめたのだった。



「レオニアの者たちは、思ったよりもずっと良くしてくれているわ。ただ腫れ物に触るようで、心を開くまでにはまだ時間が必要ね」
 姫は困ったように笑う時だけ、年相応の可愛らしさが覗く。
「もちろんでございます。私が幼少よりお仕えしてようやく得た姫のお心を、たった数日で他の召使いにもお与えになるなど、私に早くも暇を遣わすおつもりでしょうか?」
「うふふ、休めるものなら休んでほしいわ。ねぇブラマール。ルイスは今日も目の下が青いわよ」揶揄われたルイスは思わず目元に手をやって、慌てた。
「はっ――お見苦しいものをお見せしました」
「これはこれは…姫様にご心配をおかけするとは監督が至らず、申し訳ございません」
 和やかなやりとりに、わずかに目元を緩ませながらブラマールが踏み出してルイスの隣に立つ。
「ルイスは良く頑張っておりますな。問題と言えば――“頑張りすぎている”ところかと思われます。先日も休息を言い渡したにも関わらず図書室に籠りきりでした」
「まぁ、そうなのね」
「はい、このままでは城にある全ての蔵書を読みつくされてしまう日も、そう遠くないやもしれません」
 豪快なブラマールの笑いっぷりに釣られて、姫も顔を綻ばせる。が、ふと、姫が何かを思いついたように真剣な眼差しになった。
「本も良いけれど――ブラマール、ルイスを街に出してやることはできないかしら?私の代わりに、街を見てきてほしいの」
「むむ…」
 真摯な顔に詰め寄られ、ブラマールが唸る。
「…わかりました、掛け合ってみましょう。城下に王家お抱えの腕の良い彫金職人がおります。その者に、そちらの髪飾りを届けるのにも、ルイスは適任でございましょうしな」
「それがいいわ!ルイス、頼むわね」
 立ち上がらんばかりの勢いで姫の期待に満ちた瞳を一身に注がれて、ルイスは身を奮わせるのだった。





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(20190331一部改)

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