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レオニア王国記 第二期 <本編 十一話> ポポト・ディナー

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Read more>>『レオニア王国記』とは?(LSマスターLuisSera日記に飛びます)

                    

レオニア王国記 第二期 もくじ

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▷ポポト・ディナー 
                     

 <<オルゼオン大陸地図




 生まれたオークレア共和国を遠く離れ、レオニア王国城下の治療院で初めて対面することとなった異母兄弟──ノットとテオドールは、テオドールの誘いで少し早い夕飯をとろうと、レオニア城下街一番の食堂を訪れた。開店したばかりの店に客はまだまばらで、ノットは人を気にせず話せる半個室を押さえて、テオの向かいへ腰を落ち着けた。

「レオニアは料理が美味しいと評判で、それも楽しみにしていたんです。噂以上ですね、このバタードフィッシュ。魚もですけど、つけあわせのフライポポトが最高!毎日だって食べたいくらいです」

 はじめこそ妙に警戒をしてしまったノットだったが、テオドールは人当たりの良い口ぶりで、道すがらの会話と、注文した料理を口に運ぶ頃には、ノットはテオドールに対する印象を改めつつあった。自身のオークレアでのトラウマに囚われるあまり、テオドールを誤解してしまったと申し訳なさすら感じ始めていた。お互い酒は注文しなかったが、場は朗らかだった。

 テオドールは語る。

 テオドールの母──ノットの母妹、叔母にあたる──は結果としてオークレアを去ることになったが、母子二人で暮らすために充分な金銭を持たされ、父のことは恨んではいないと。
 腹違いの兄、ノットの存在を知った時には驚きもしたが、それよりも、テオドールの存在を知ることで同じように──いや、それ以上に罪悪感を感じているのでは無いかと心配が勝った。数年して、ノットがあの本家を、オークレアを出たと知っては、なおさらに。

「警戒させてしまって申し訳ありませんでした。安心してほしい、今更オークレアに連れ戻そうなんて気は全くありません。私は母ももう亡くなってしまい……父には今更会おうものなら、ただ迷惑をかけてしまうだけです。対面などするつもりは毛頭ありませんが、あなただけが心配で。調べてみればレオニアに一人暮らしていると聞いた。それがどうでしょう、しっかりとした診療所まで構えられている。感動しましたよ──本当に、よかった」

 突然の訪問を詫びつつ、ようやく会えた喜びを嬉しそうに語るテオドールを無碍にする気持ちなど、ノットには抱きようもなかったのだ。

「そう…なのですね。お母様はいつごろ?」

 ノットの母と妹とは、ノットの父との恋慕がなければ元々は仲の良い姉妹だったと聞く。すでに他界していたと聞かされた哀傷に、せめてテオドールのそれが和らぐようにと食後のハーブティーを双方のカップにそそぎながら、ノットは尋ねる。
香り良い湯気を吸い込むと、テオドールはさらりと昔話を続けた。

「ああ、ずいぶん経ちます。十年…あのときの流行病は覚えてますか」
「!もちろんです」

 ノットは思わず目を伏せた。
 十年前、レオニアと、オークレアを中心にオルゼオン大陸の半分へ伝播した、たちの悪い伝染病。忘れるべくも無い。ノットが今ここに根を張り、暮らしてゆく導となった彼女を、天へと奪い去った、憎き病なのだ。家族を失った者同士の悲しみが胸を突く。

「実は私もその時に伴侶を…」
「なんですって、それは……辛かったでしょう」

 テーブルにおいていた手に、テオドールが両手を重ねて、労わるように握りこまれ、ノットはそれを見つめた。その励ますような力強さは、面映くも、あたたかい。

「…ありがとうございます。あれからこうして医者として励んではいますが、お恥ずかしながら、ひと個人では太刀打ちできない力というのでしょうか。もうあのような…地獄のような災いは、二度と起こらないよう願うばかりです」
「……ええ、本当に」

 一段低めた、落ち着かせるような声音で、テオドールが頷く。

「奥様はどこか墓地で眠られているのですか?」
「ああ、はい。お世話になっている教会へ」
「ご生前のうちにお会いすることはできませんでしたが…せめて、滞在中に私も墓前へご挨拶に行かせていただけませんか。義兄さんさえよければ、ですが」

 いくら血を分けた兄弟とはいえ、数時間前に会ったばかりというのにまさかそこまで願い出てくれるとは思ってもみず、驚いたノットが顔を上げれば、瞳を潤ませたテオドールがこちらを見ていた。

「ええ、はい。ぜひ…!」

 その親身な姿に、ノットは感激してテーブルの両手を握り返すのだった。
 ……と、そこに数歩先、今や満席で賑わうホールの喧騒から、ビールジョッキを2つ持って歩いていた赤髪の男が、咥えタバコのまま声をかける。

「おう、ノットセンセ。偶然だな」
「アイゼンさん!こんばんは」

 不意に現れた知り合いに、ノットは照れながら慌ててテーブルの手を引っ込めた。

「そっちはここいらじゃハジメマシテ、ってツラだな。何やら勧誘でもされて引っかかっちまってるんじゃないか?」
「ああ、いや、こちらは……テオドールさんです。私も今日初めて会えたんですが、実は母違いの弟がいまして。はるばる私を訪ねてきてくださったんです」
「初めまして、テオドールと申します」

 紹介を受けたテオドールは、丁重な笑顔とともにアイゼンに握手を求めて腰を浮かせかけたが、両手がジョッキで塞がっているアイゼンは、「そういうガラじゃない、パスだ」と雑に辞退した。苦笑いとともに椅子に戻る。

「そうか、感動のご対面ってワケか。そりゃよかった。いきなり悪かったな、なんせ最近物騒な噂も聞くからよ。弟さんも初めてこの辺に来たってェなら、センセに案内してもらって変な通りに入らないように気をつけてくれ」

 ニヒルな笑みと忠告を受けて、テオドールは「うふふ」と綺麗に笑い返す。そんな気安いやりとりの中、アイゼンの咥え煙草の灰が落ちる寸前、向こうの席から、カトラリーで皿を叩く断続的な──明らかに杯を急がせる催促の──音が響いた。
 とっくに日は落ちた室内というのに、サングラスをかけ、髪をオールバックに整えたヒューランの男がこちらを見ていた。そのテーブルには、一体何人前なのかわからないほど山盛りのフライポポト。裾野はぐるりとスモークチキンが囲む。

「邪魔したな。じゃあまた」

 アイゼンは片方のジョッキを軽く上げると、その鶏と芋の山脈そびえる卓へと歩いていった。

「ずいぶんアウトローな雰囲気のかただ。義兄さんの友人ですか?」

 風来坊然としたアイゼンと、いかにも几帳面さが見て取れる医者であるノットの佇まいは、意外な組み合わせに見えるだろう。不思議そうな表情のまま、テオドールが軽く尋ねる。

「ああ、そう……ですね。と言っても友人なんて紹介すると、彼からは違うと言われそうですが。仕事づきあいでもあって、アイゼンさんは便利屋をされていますので、素材の調達や力仕事をお願いすることもあるんです。口調はあんな感じですけど、情に厚いかたなので悪く思わないでくださいね」

 少し困った友人の素行を思い出して苦笑しつつ、答えるノットの口ぶりはどこか楽しそうなのだった。




  ーレオニア王国記 第二期 十二話につづくー  



(20230413初掲)


                    

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■レオニア王国記本編 第一期もくじ■
ここから全てが始まった。Bramaleさん作の本編を軸に広がる、レオニア国をめぐる群像劇!



完結済みのレオニダス著 レオニアサイドストーリー:
■レオニア王国記 前日譚■
タイガルドから、元敵国へ輿入れとなったローザ姫に付き従う、宰相の若き日──ルイスの物語。

■レオニア王国記 よみびとしらず■
本編より遡ること20年前。レオニアは未だ戦争の渦中にあった。王子であったレオニダスの
ある出会いの話。


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