ヤ・シュトラが「マトーヤの洞窟に挨拶に行きましょう」と言ったとき、私は静かな期待を抱いた。
師と弟子──その間に流れる時間や言葉を、私もこの目で確かめたかったのだ。
洞窟に入ると、早速マトーヤの軽やかな突っ込みが返ってきた。
「死の間際に見る走馬灯にしちゃあ、気の利かない面子だね」と笑うその声音に、場がふっと和む。
ヤ・シュトラは照れを含んだように言葉を返し、でもその口調には確かな敬愛が宿っていた。
私は、そのやりとりを少し離れた場所から静かに見つめていた。
アルフィノが補足するように、第一世界でのヤ・シュトラの働きを語ると、マトーヤは意外なほど軽口で応じる。
師の言葉は厳しくも温かく、弟子の肩を押すためのものだとわかる。
グ・ラハ・ティアが自己紹介をすると、マトーヤはさほど構えずに受け流し、逆に場の空気を柔らげてくれた。
その姿を見て、私は安心する。ここには、無理に畏敬を求めない関係があるのだ。
ヤ・シュトラとマトーヤの会話の端々から、師弟の持つ絆が伝わってきた。
言葉少なでも通じ合う間合い、過去の失敗を笑い飛ばす温度。
師であるマトーヤが、弟子の成長を素直に喜び、弟子が師の存在を深く信頼している――そんな具体的なやり取りが、私の胸にしっとりと残る。
グ・ラハ・ティアが「未熟な術のせい」と謝ると、マトーヤは肩の力を抜くように受け止めた。
叱責ではなく、励ましと言葉少なに突き放すそのやり方は、厳しさと慈しみの両方を含んでいる。
彼らの間にあるのは、ただの師弟関係以上のものだと感じた。長い時間で磨かれた信頼と、互いを思いやる気持ちがある。
立ち去る間際、ヤ・シュトラの瞳は少しだけ柔らかくなっていた。
私もまた、その場の空気を胸に刻む。師弟のやり取りは派手ではない。けれど、確かに人を支える力を持っている。
こうした小さな触れ合いが、これから先の道を静かに支えてくれるのだろうと思う。
洞窟を後にして歩きながら、私はふと考える。
誰かの教えを受け、また誰かを支える──それは戦いの中でも日常でも、同じくらい尊いことだ。
今日見たささやかな場面が、いつか私の支えになるだろう。
そんな予感を、私は大切に携えていくつもりだ。