FF14バックステージ調査隊⑧VFXアーティスト:石井隆康さん
バックステージ調査隊
こんにちは。宣伝チームのみやみやです!
FFXIVの開発/運営スタッフに裏話を聞いていく企画、「FF14バックステージ調査隊」。
今回はVFXアーティストの「石井 隆康(いしい たかやす)」さんにお話を伺いました!
VFXとは「Visual Effects」の略で、つまりエフェクトのこと。実際に現実では目にすることのできない画面効果を可視化したもので、エフェクトによってゲーム内はよりリッチに、より表情豊かになっていきます。そんなエフェクトはどのように生み出されているのか、その背景に迫ります!
▲プロフィール写真用に、石井さんが開発環境で使用しているキャラクターの画像をいただきました。なんと新生時代から変えずに使用しているとのこと!長年一緒に開発をしてきた、まさに"相棒"のような存在ですね。
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みやみや:まず初めに、石井さんがFFXIVチームに参加されるまでの経緯を教えてください。
石井: もともとアニメーションの制作会社でコンポジット(3DCGや2Dの作画など複数の素材を合成すること)をしていて、その経験からゲーム会社のエフェクトに興味をもつようになりました。その中でもグラフィックスならスクウェア・エニックスというイメージがあったため、2007年に入社しました。入社後は『ディシディア ファイナルファンタジー』『ディシディア デュオデシム ファイナルファンタジー』『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー』『ファイナルファンタジー零式』など様々なチームでの経験を経て、FFXIVチームには新生が動き出した頃に配属となりました。
みやみや: FFXIVチームにおけるエフェクト班とは、どのようなお仕事をされているのでしょうか。
石井: エフェクト班は大きく3つに分かれており、カットシーンVFX/BGVFX/バトルVFXとそれぞれ専門パートを持っています。
「カットシーンVFX」はその名の通り、カットシーン専門でエフェクトを制作しているチームになります。「BGVFX」はフィールド内の環境......例えば雨や雪、それから火山の煙・滝の水しぶき・松明などの表現や、ボスバトルにおいてはマップに紐づくギミックを担当しています。
▲ド派手な演出のカットシーンVFXも好きですが、繊細な涙の表現にも心が動かされます......!
▲天候がギミックに密接に関わる「ビスマルク討滅戦」。雲や雷など、天候表現はすべてBGVFXによるもの!
そして自分がリードを担当している「バトルVFX」は、主にプレイヤーやモンスターまわりのエフェクトを作っています。バトルやキャザラー&クラフターのアクション、マウント・エモート・ミニオン・武器などが担当領域になります。
▲筆で床の色を塗る「チョコボの筆」エモートもバトルVFXの担当!そう言われてみると、「次元の狭間オメガ:シグマ編2」でも見覚えが......!
みやみや:本当に至るところにエフェクトが施されているのですね......! バトルVFXはざっくりとどのように作られているのでしょうか。
石井:ジョブアクションで言うと、まず企画側から資料ベースで各アクションの発注があります。そこには攻撃なのか回復なのか/単体なのか範囲なのかなど基本的にはテキスト情報のみが記載されており、画作りについてはすべてアーティストに任せていただいています。
続いてモーション班がその発注に即して、各アクションに対してアニメーションの候補をいくつか絵コンテとして作ります。それをモーション班とエフェクト班とリードアーティストの市田真也で精査し、どのモーションで進めるかを決めます。その後、決まったモーションに合わせてエフェクトのイメージを作り、企画の意図や仕様に齟齬がないかを確認しながらブラッシュアップしていき完成です。
このように基本的にはエフェクト側で自由に作成していますが、例外としてゾディアークの魔法陣など設定上デザインが決まっているものをエフェクトに使用する場合には、アート班に設定に則ったものを描いていただき、それをもとにエフェクトを作成しています。
みやみや:バトルアクションのエフェクトはモーションと密接に関わっているのですね。 『暁月のフィナーレ』で登場した新ジョブ「リーパー」「賢者」のアクションはそれぞれ特徴的なエフェクトですが、どのように仕上げていったのでしょうか。
石井:まずリーパーについてですが、エフェクトの制作を始める際 "両手鎌を使う"こと、"ヴォイドからアヴァターを呼び出す"という設定はすでに決まっていましたので、それを受けエフェクトとしてはダークな表現を目指しました。ただ、それだけだとアシエンや暗黒騎士とイメージが被ってしまうため、リーパーならではのベースカラーを設けることにしました。そうして決まったのが、今の「黒+青緑」です。
これまで明るい緑系はヒーラージョブなどには使用されていましたが、DPS・タンクジョブで緑系の色を使っているものは少なかったため、差別化しやすいということで決定しました。また、今までのジョブはヒットの方に重きを置くことが多かったところ、リーパーの特徴である斬撃の"軌跡"の方に重点を置き、他のジョブとは異なる存在感を出すことにしました。
▲派手に鎌の軌跡を描く青緑のエフェクトは、パーティバトルでも目を引きます。
▲一方、アヴァター憑依後はヴォイドの力を取り込んでいる状態なので、そこは「黒+赤」として変化を出し、設定とも齟齬がないようにしているとのこと。
賢者はヒーラーなので明るい色にしようというのは念頭にあったのと、賢具のベース案とアルフィノやジョブ専用装備のアートも出来ていましたので、ベースカラーは「白+青」でいこうとすんなり決まりました。アート班から"納刀/抜刀をするときに賢具から尾を引くようなエフェクトを出したい"と要望があり、「白+青」であれば武器の色にも合いそう、というのも決め手となりました。
アクションの表現としては、いわゆる白魔道士のようなふわっとした魔法というよりは、賢者は立体的なバリアやレーザー攻撃が豊富なため、シャーレアンの技術を意識して少しシャープなイメージにしました。また、賢者はキャラクター本体からエネルギーを放出するのではなく、賢具から力を発して攻撃や回復を行います。武器の存在価値が薄くならないよう賢具を中心とした表現にする必要があったため、条件の縛りもキツく担当者は苦労していましたね。
みやみや:最初にベースカラーを決めることで、ジョブのイメージがブレず一貫性をもったエフェクトになるのですね。 数あるデザイン系の業種の中でも、石井さんが思う"エフェクトならではの魅力"を教えてください。
石井:表現の多様さ、自由度の高さがエフェクトの魅力だと思います。先ほどの通り、FFXIVにおいても発注資料はありますが、絵づくりに関しては任せていただいています。エフェクト班のスタッフにも「こういうものを作ってくれ」とはお願いせず、まずは好きなように作ってもらい、それがFFXIVとしてクオリティ的にも仕様的にも問題なければそれでOKです。
もちろん完全お任せであることによる難しさもありますが、縛りがなく好きなように作らせてもらえるので、楽しくてやりがいがあります。
みやみや:自由度が高いからこそ、これだけジョブやコンテンツが多い中でも、一つ一つが個性的で新鮮なエフェクトを作り続けることができるのですね。 石井さんがこれまで手掛けられたFFXIVのエフェクトの中で、特に印象に残っているものについて教えてください。
石井:自分の中でいちばん印象深いのは、ナイトのアクション「パッセージ・オブ・アームズ」です。
▲「パッセージ・オブ・アームズ」は、自身のブロック発動率を上げ、自身の後方範囲にいるパーティメンバーの被ダメージも軽減するアクション。戦闘中だけでなく、街の中やフィールドなどどこでも発動可能。
どこでも使えて絵的にも破綻せず、自身の後方範囲への効果を成立させるエフェクト......という難しい条件に非常に悩み、今までのなかでいちばん"作っては壊して"を繰り返しました。またこれはアーティストあるあるだと思うのですが、ずっと一つのものを作っていると、それが良いのか悪いのかも分からなくなり「一体何を作っているんだろう......」という気持ちになることがあるんです。そんな中で最初のベース案を当時のリーダーや吉田P/Dに見ていただいたところ、好意的なフィードバックをもらえたことで手ごたえを感じ、モチベーション高く完成までもっていくことができました。そういった生みの苦しみと達成感で、いちばん印象深いです。
みやみや:「パッセージ・オブ・アームズ」、とにかく見た目が派手でカッコよく、守られている感もバツグンで大好きです......! 続いてエフェクト付きの武器についてお伺いします。これまで多数の印象的な"光る武器"が登場しましたが、石井さんがご担当された中で特にお気に入りのものはありますか?
石井:自分が担当した中では、ラーヴァナのハイヴ武器です。
▲ラーヴァナのハイヴ武器。赤く輝く武器の周りには蝶が舞っています。
武器エフェクトは抜刀時に常時出るものですので、単発で瞬間的に出るバトルエフェクトなどと比べると制約もより厳しく、リッチなアニメーションを付けるのが難しいのです。
そんな制約の中で、周りに蝶が飛んでいるように見せるため、少ないポリゴンで制作したモデル1つを工夫してアニメーションさせています。スーパースローの蝶の動きを観察しなるべく動きを本物に近づけるなど、当時としてはすごくこだわって作りました。
▲蝶はこちらのメッシュ(ポリゴンの面が集まった集合体)にテクスチャを貼り付けて、拡縮・回転・移動させることで羽ばたいているように見せているとのこと。
みやみや:制限がある中でどれだけインパクトを持たせることができるか、毎回試行錯誤されているのですね。 来たるパッチ6.11で追加される「絶竜詩戦争」の報酬武器も、何かデザインのヒントをいただけないでしょうか......!
石井:今までの絶武器はアレキサンダーであれば歯車など、いわゆるバトルやコンテンツで印象的なモノをデザインに組み込んでいましたが、今回も同様に象徴的な図案を取り入れてあります。それが何かというところは......ぜひお楽しみに(笑)。
みやみや:非常に楽しみです......! では最後に、今後に向けての意気込みなど、プレイヤーの皆さんに向けてひとことお願いします!
石井:日々SNSやPLLのコメント、フォーラムなどを拝見して励みにさせていただいています。いろいろなご意見をいただけることで、見直すべきポイントが見えてくることがあります。ぜひエフェクトで思ったことがあればフォーラムやSNS等で発信していただけると嬉しいです。
FFXIVが大切にしている要素の一つである色覚多様性への配慮もしながら、多くの方のゲームプレイの助けになるような見やすさ・分かりやすさを大切にしつつ、これからも皆さんのゲーム体験にいっそうの感動を与えられるように、そして各ジョブやキャラクターにいっそうの愛着をもっていただけるように、魅力的なエフェクトを作っていきたいと思います。
これを機に少しでもエフェクトに興味をもっていただけたら嬉しいです。今度ともどうぞよろしくお願いします!
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いかがでしたでしょうか?
「綺麗さ」や「カッコよさ」、時には「恐ろしさ」「禍々しさ」などを視覚的に表現するエフェクトに、ぜひ今後もご注目ください!きっとこれまで以上にFFXIVの世界への没入感が深まるハズ。
ではまたお会いしましょう!
みやみや(宣伝チーム)
★FF14バックステージ調査隊バックナンバー★
・第1回:リードストーリーデザイナー:織田万里さん
・第2回:リードレベルデザイナー:高橋新さん
・第3回:WEBディレクター:高地浩之さん
・第4回:UIアーティスト:関洋一さん
・第5回:コンセプトアーティスト:長嶺裕幸さん
・第6回:コミュニティチーム:加藤岳志さん
・第7回:リードテクニカルアーティスト:岡久達哉さん
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