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【外伝(杜都編):最終話】行って帰ってくるだけの物語

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【はじめに】
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本稿はメインキャラであるEdda Pure-heartのロドスト上にて公開中のプレイ日記『もうひとつのエッダの物語』(以下、本編とする)の外伝(サイドストーリー)になります。

まだ本編をご覧になっていない場合は、先に本編である『もうひとつのエッダの物語』をお読み頂いてから、本稿をご覧頂くことをお勧めいたします。

〇『もうひとつのエッダの物語』および外伝の相関関係
【第一話】杜都グリダニア
【第二話】大地、そして風と水と
【第三話】不審者を追え!
【第四話】ウォーレン牢獄の影(前編)
【第五話】ウォーレン牢獄の影(後編)
【第六話】不穏な報せ
 【外伝(杜都編):第一話】武具職人の弟子
 【外伝(杜都編):第二話】女商人ロウェナ
【第七話】大樹で蠢く闇の鼓動(前編)
【第八話】大樹で蠢く闇の鼓動(後編)
【第九話】Re:光の戦士
 【外伝(杜都編):第三話】この冒険者に福音を
【第十話】そして世界へ
【第十一話】海都と砂都と
 【外伝(杜都編):第四話】砂都への誘い
 【外伝(杜都編):最終話】行って帰ってくるだけの物語 ※本稿
【第十二話】グリダニアからの旅立ち
 【外伝(砂都編):第一話】ある冒険者たちの物語
【第十三話】冒険と日常のあいだ(前編)
【第十四話】冒険と日常のあいだ(後編)
 【外伝(砂都編):第二話】冒険の仲間たち
【第十五話】夢見る指輪
【第十六話】冒険者たちの饗宴
 【外伝(砂都編):第三話】剣に生き、剣に泣く


【外伝(杜都編):最終話】行って帰ってくるだけの物語

グリダニアの黒檀商店街(こくたんしょうてんがい)は朝から活況を呈していた。

杜の都と謳われるグリダニアにはふたつの商業施設がある。旧市街地の東端にある「木陰の東屋」を境に北側を黒檀商店街(こくたんしょうてんがい)、南側を紫檀商店街(したんしょうてんがい)と呼んだ。

都市国家が建設された当時より現在にいたるまで、民草が必要とする物資はこのふたつの商店街が賄ってきた。とくに黒檀商店街は職人や商人向けの品をあつかう店が軒先を連ね、その品揃えはグリダニア随一といって差し支えない。

その黒檀商店街に店を構えるリシュシュは、グリダニア内外の仲買人相手に取引をおこなう交易商人だった。グリダニアの村落で売られている民生品や、双蛇党をはじめとする軍組織、国内の各ギルドに納められる物資や武具など、リシュシュが仲買人たちに卸している商品は数知れない。

そのリシュシュの店先では、注文品であるヤカンの納品にいそしむドレイクの姿があった。店の奥にある棚に商品をひととおり陳列し終えたドレイクは、しばらくのあいだザナラーンに身を置くことになったとリシュシュに告げた。

「そうか、行ってしまうのか。いっときとはいえ、お前さんが来ないと思うと少し寂しいのう」

「これまで商店街の皆さんには、いろいろとお世話になりました。ザナラーンでの用事を済ませたら、またグリダニアに戻ってまいります。そのときは、どうぞご贔屓に」

ドレイクはそう言ってリシュシュに微笑んでみせた。

「ワシらのことは心配しなくてよいのじゃ。お前さんとこに頼んでおった武具は、黒兎堂のマイセンタが仕入れてくれる。なんでもモードゥナに店をかまえる商人と取引を始めたそうでな」

黒兎堂が取引を始めたモードゥナの商人――ロウェナこそが、ドレイクを師のゲロルトと共にザナラーンへ追いやった張本人であることを、このときリシュシュは知る由もなかった。

「じゃが、直しの仕事まで任せられるとは限らん。冒険者たちは自分の身体に馴染んだ装備を好む。買い直しではなく、修繕を依頼してくることが多いのじゃ。その点、お前さんの師匠の直しは見事じゃった。ただ修繕されているだけではない。まるで魂でも宿ったかのように手に良く馴染む。エオルゼア広しといえども、あのような仕事のできる職人は滅多におらんじゃろうて」

ゲロルトはその酒グセの悪さから、グリダニアの商店主のあいだで評判が良くなかった。そのことを人づてに聞いていたドレイクは、エオルゼア随一と謳われるゲロルトが、その名声にそぐわない扱いを受けていることに忸怩(じくじ)たる思いを抱いていた。

そんなゲロルトをリシュシュは武具職人として高く評価してくれた。もちろん、これまで積み上がったゲロルトの悪評が、ただひとりの賛辞によって帳消しになるとはドレイクも思っていない。それでもドレクは嬉しかった。ただそれだけのことが、なぜだかとても嬉しく思えたのだった。

その後、リシュシュより商品の代金を受け取ったドレイクは、そのままハーストミルの工房へまっすぐに戻っていった。明日の出立にそなえて、残っていた荷造りを終わらせる必要があったからだ。

もっとも、ザナラーンに持っていくものといっても、自分たちの鍛冶道具と材料の鉱石くらいなもので、何か足りないものがあれば向こうで調達すれば良いとゲロルトは言う。

そのゲロルトのことばにドレイクはさして疑問は抱かなかった。これから向かうウルダハは「砂の都」と謳われるエオルゼア随一の商業都市であり、ウルダハ商人たちが築き上げた偉大な都市国家なのだ。カネさえあれば、どんなものでも手に入れることができる。

もっとも、その代金を支払うのは自分ではなく、ロウェナだとゲロルトは思っているわけなのだったが。

次の日の朝、ハーストミルの工房に一台のチョコボキャリッジが到着した。ザナラーンの工房には、ロウェナが手配したチョコボキャリッジで移動することになっている。

工房に横付けされたキャリッジの荷台にドレイクが鍛冶道具や鉱石の入った木箱を積み込んでいた。すると、その横からゲロルトが酒瓶の詰め込まれた木箱を積み上げていく。荷台がズシリと沈み、傾いた荷台に引っぱられたチョコボが堪らず悲鳴をあげた。

「ダ、ダンナ! それ以上はムリだ! 鳥たちが参っちまうよ」

ふたりの作業を心配そうに見ていた御者が、荷台に積み上がった木箱を目にしてゲロルトを制止する。

「チッ、仕方ねぇな・・・。おい、ドレイク、そこにある石コロをぜんぶ降ろしやがれ!」

「えっ? あの・・・お師匠様、ぜんぶ降ろしてしまうのですか?」

ゲロルトの真意をはかりかねたドレイクが、そう言ってゲロルトに聞きかえした。それもそのはずで、鉱石は武具の素材となるインゴットの原料であり、その鉱石がなければ工房は立ちゆかない。だが、ゲロルトはその鉱石を置いていけと言うのだからドレイクが戸惑うのも当然だった。

「アアン? そんなもン足らなきゃ、ロウェナのババァにツケ払いでどうにでもなるだろうがよ。それよりも酒だ! こちとら今回の仕事にゃ命と借金が懸かってンだよ!」

ゲロルトはそう言い残すと、さっさとキャリッジの荷台に乗り込んでしまう。結局、さきほど積み込んだばかりの鉱石は、この一件に巻き込まれたドレイクが、この後ひとりで降ろすハメになるのだった。

ハーストミルの集落から昼餉(ひるげ)の炊煙がのぼり始めた頃、武具職人の師弟を乗せたキャリッジがザナラーンに向けて出発した。大粒の汗を額に滲ませたドレイクは、荷台の柵に寄りかかるようにして座っていた。そのドレイクの目の前では、さっそくゲロルトが蒸留酒のはいった瓶を傾けている。

空腹を感じていたドレイクは、傍らの雑嚢袋の中をまさぐり、集落の住人アメッタから渡された弁当をとりだした。地場野菜と獣肉をパンで挟んだ手製のサンドイッチ。ドレイクはそのサンドイッチをもそもそと頬張った。



ハーストミルの集落には穏やかな日差しが降りそそいでいた。ときおり吹き抜ける風がほてった肌に心地よい。集落の住人たちが行き交い、広場には駆け回る子供たちの声が響いている。

いつもの風景だった。いつもの小径。いつもの木々のざわめき。いつもと違うのは自分たち。キャリッジに揺られて、ザナラーンの地へ向かっている。

「お師匠様・・・また戻ってこれるでしょうか?」

郷愁と不安を感じたドレイクがゲロルトにぽつりと言った。

「・・・アン? 別にどうってことはねぇ。さっさと借金を返済して、また帰ってくるだけの話だろうがよ」

ゲロルトはそう言って蒸留酒の瓶をあおると、まるで卵を抱えたチョコボのように、酒瓶を抱きしめてその場に身体を横たえた。

午後のあたたかな陽気のなか、武具職人の師弟を乗せたキャリッジが黒衣森の街道を進んでいく。いつしか話し声の聞こえなくなった荷台に御者が振り返ってみれば、武具職人の師弟は静かな寝息をたてて眠っていた。


◇◇◇

武具職人の師弟がウルダハに旅立ったのと同じ日、グリダニア・ランディングから一隻の飛空挺が飛び立った。

その飛空挺にはひとりの冒険者が搭乗していた。その冒険者は名をエッダといった。彼女はグリダニアの国家元首カヌ・エ・センナからの任務を帯びて、同盟国リムサ・ロミンサに向けて旅立っていったのだった。

グリダニア・ランディングの発着場では、人々が飛び立つ飛空挺に手を振って見送っている。そのなかに、カーラインカフェの女主人ミューヌと神勇隊隊長リュウィンの姿があった。

エッダと近しい間柄のふたりが、彼女の歓送に出向いたことは別に奇異なことではない。私事を優先することの難しい立場のふたりが、こうしてエッダの見送りに出向けたことのほうが、むしろ希だったといえる。

発着場を飛び立った飛空挺は、上空でリムサ・ロミンサのある西の方角に大きく旋回すると、人々が見守るなか速度をあげて進んでいった。飛空挺が次第に遠ざかり、その姿が黒衣森に隠れてついに見えなくなると、見送りの人々の姿もまばらになっていった。



「行ってしまったか」

名残惜しそうにリュウィンが言うと、傍らにいたミューヌがクスッと小さく笑った。

「リュウィン隊長が、こんなにもあの子にご執心だったとは知らなかったよ」

「いや、別にそういう訳ではないが・・・。あの冒険者はグリダニアのために旅立ったのだ。せめて見送りだけでもと思ってな」

リュウィンがなんとも歯切れの悪い弁明をすると、ミューヌは少しばかり意地の悪いことを言ってみたくなった。

「僕の店で給仕をしていたころから、あの子は年配客に人気があってね。彼女を目当てに来る男性客も多かったんだ。まっすぐな健気さというのかな? みんなあの子のことを放っておけないんだ。きっとリュウィン隊長も同じなんだろうね」

「む・・・」

ミューヌの含みのあることばに、仮面の下からのぞくリュウィンの両目が宙をさまよった。しばらく沈黙していたリュウィンは、おもむろ口を開いてミューヌにこうこたえた。

「・・・娘と同じなのだ」

リュウィンから返ってきたこたえに、ミューヌはエレゼン族特有の細長い目をぱちくりと瞬かせた。

リュウィンは結婚して間もなく妻を亡くしていた。その後も独身を貫いてきた彼に娘がいないことはミューヌも知っている。この生真面目な男が冗談を言っているとも思えず、その意味が理解できなかったミューヌは白い指先を口元にあてがい首をかしげていた。

「・・・いや、もしもの話だ。もし、わたしに娘がいたら・・・あれくらいの年頃かと、思ってな。おかしなことを言っていると思うだろうが、わたしにはあの冒険者が自分の娘のように思えるのだ」

飛空挺の飛び去った空を眺めながらリュウィンがそう言った。

かつて、リュウィンがまだ腕利きの猟師をしていた頃、突如黒衣森に侵攻してきたイクサル族によって、リュウィンは妻を失った。それをきっかけに神勇隊に入隊したリュウィンは、それから三十年のあいだグリダニアの国防にその身を捧げてきたのだった。

もし、リュウィンの妻がイクサル族の凶刃に倒れていなければ、エッダとおなじ年頃の娘がリュウィンの傍らに立っていても不思議ではなかっただろう。そんな想いを巡らせたミューヌは、ひとり空を見上げているリュウィンに視線を向けた。ミューヌにはリュウィンの背中がいつもより小さく映って見えた。

「あの子なら大丈夫だよ。きっと上手くやってくれるさ」

そう言ってミューヌは肘を抱えるように腕を組むと、飛空挺の飛び去っていった西の空を見上げた。地平線の先には海都リムサ・ロミンサがある。ミューヌは旅立っていったエッダの行く末を祈った。

「クリスタルの導きがあらんことを・・・」



◇◇◇

この日リュウィンが朝から二刻ほど司令室を不在にすることは、神勇隊の全部隊に事前に通達されていたことだった。

リュウィンが司令室を不在にする理由は、神勇隊に協力し多大な貢献をした冒険者の歓送のためとなっていた。また、当然のことではあるが、このことは国家元首であり、総軍の司令官でもあるカヌ・エ・センナの裁可を受けており、公務の一環として正式に認められたものだった。

ところが、この司令部の通達内容について、司令室の当直にあたっていた隊士たちのあいだでは、少しばかり見解が異なっていたようだ。

「おい、リュウィン隊長いったいどうしちまったんだ? 朝からずっと落ち込んでるみたいじゃないか」

神勇隊司令室に当直で詰めていた若い隊士が声を細めて傍らの同僚に言った。

「またカヌ・エ様に叱られたんじゃないのか?」

「オレが聞いた話だと、トリプルトライアドで双蛇党の連中にカモにされたらしいぜ」

「いや、カモにされたのは間違いないが、負けた相手はバノック練兵場のガルフリッド隊長だそうだ」

単調な当番任務に飽いていた若い隊士たちは、それぞれ勝手なことを口にしては噂話に興じていた。

「みんな違うな。じつは隊長殿は、あの冒険者に惚れてたんだ。でも彼女はカヌ・エ様の特使としてリムサ・ロミンサに行っちまっただろう? 片思いの恋人をなくして、気の毒にも隊長殿は、悲しみのどん底に沈んでいるのさ」

その隊士の思わせぶりな話し方にどっと笑いがわき起こった。なかには笑いを堪えきれず吹き出す者もでる始末。

若い隊士たちの噂話が佳境を迎えていたとき、司令室の入り口に初老の隊士が姿を現した。歩哨に立つ隊士が直立不動の姿勢をとると、その初老の隊士は鋭い眼光をもって黙礼を返す。

リュウィンの副官を務めるその初老の隊士は、神勇隊の中にあって一兵卒から牙曹長まで上りつめた叩き上げだった。その剛毅で木訥な人柄から神勇隊内では「おやっさん」と呼ばれ慕われている。

司令室に入室しようと扉の前に立った副官は、扉越しに漏れ聞こえてくる笑声に眉をつり上げた。

入室してきた副官の存在に、まったく気づいていなかった若い隊士たちは、晴天に突然轟いた雷鳴のごとき一喝に、まるで豆鉄砲を喰らった鳩のように驚きふためいた。

烈火のごとき形相の副官を前に凍り付いた若い隊士たちが、その後、この副官からこっぴどく叱責を受けたことは言うまでもない。

このような光景が日常のなかで見られるのも、グリダニアが平穏のうちにあったからといえる。大目玉を食らった当人たちにしてみれば、とても生きた心地はしなかったのだろうが、グリダニアでは穏やかな時が流れていたことに変わりはない。

母なるクリスタルに導かれ、運命の交わる街角にたつ冒険者たち。

それぞれの想いを胸に旅立つ者がいれば、その帰りを待つ者もいる。行って還ってくる者がいれば、二度と還ってこれない者もいる。

彼らをとりまく「運命の輪」が、この先どのような未来を指し示すのか、そのことを知る者は誰もいないのだ。

クリスタルは、ただ静かに、その輝きを放っていた。


【第七話】大樹で蠢く闇の鼓動(前編) に戻る
【外伝(砂都編):第一話】ある冒険者たちの物語 へ続く

【あとがき】
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貧弱な文章力と構成力で何とか書き上げました外伝(杜都編)最終話でしたが、最後までお読み頂きましてありがとうございました。

ロウェナに取り込まれたドレイクとゲロルトは、期せずしてザナラーンに旅立つことになりました。また、ときを同じくして、ドレイクがカーラインカフェで出会った冒険者のエッダもカヌ・エ・センナからの任務を果たすべくリムサ・ロミンサに旅立っていきました。

この先、再び彼らが互いの運命を交わらせることはあるのでしょうか? また、ザナラーンの地に向かった武具職人の師弟を待ち受けるものは何か?

そのこたえは『外伝(砂都編)』の物語に引き継がれて語られることになります。今後の物語の展開にどうぞご期待ください。

さて、現実世界ではコロナウィルスの変異株による感染が急速に広がっていて、まだまだ気の抜けない状況が続いております。みなさまも、どうぞお大事になさってください。
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