FF14バックステージ調査隊⑫プロジェクトマネージャー:永井遊さん、佐藤司さん

バックステージ調査隊

こんにちは。宣伝チームのみやみやです!
『FFXIV』の開発/運営スタッフに裏話を聞いていく企画、「FF14バックステージ調査隊」。

20230313_mm_01.png今回はプロジェクトマネージャーの永井遊さん、佐藤司さんに突撃。
FFXIVにおけるプロジェクトマネージャー(以下、PM)とはどんな存在なのか?具体的な担当セクションにもフォーカスしながら、お仕事の詳細を伺ってきました!

******

みやみや:まずはFFXIVチームのPMがどのような業務をしているのか、教えてください。

永井:FFXIVチームのPMの最も大きな業務は、各セクションの進捗管理です。FFXIVは基本的に次の拡張までの期間や、その間の各パッチのスケジュールがある程度決められています。FFXIVチームはデザイナー/アーティスト/プログラマーなど多数の職種が集まった巨大なプロジェクトなので、それぞれのセクションに対してPMが進捗管理をすることで、スケジュール通りにパッチをリリースできるようにしています。

それに加え、外部との契約や交渉、また「セイブ・ザ・クイーン」「YoRHa: Dark Apocalypse」などゲストクリエイターをお迎えしたコンテンツを開発する際には、相手先とのやり取りの窓口も担当しています。「ゲームの中身を作る"以外"の開発業務に関わるお仕事全般」、と言い換えられるかもしれません。

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みやみや:運営型のFFXIVにとって進捗管理は一段と大変な印象ですが、その他にも幅広い業務を担当しているのですね。 それでは次に、お二人のこれまでの経歴や現在の担当業務について教えてください。

佐藤:アニメーション制作会社で4~5年ほど制作進行などのお仕事をした後、現在の第三開発事業本部に転職し、当初は『ドラゴンクエストビルダーズ2』のアシスタントPMをしていました。最初はゲームの作り方が一切分からず、アニメ制作現場との文化の違いなどを感じとても苦労した記憶があります。その後FFXIVチームに合流し、今に至ります。

現在はグラフィックス系、特にキャラモデル/BG/モーション/エフェクトの開発進行をメインで担当しています。他にも、大小様々なアップデートのリリースに向けて開発全体のスケジュール管理を行っており、調整が必要な箇所や確認できている不具合を"いつまでに、どこまで対応するか"の精査を、主要な開発メンバーやQAスタッフと行っているのですが、この取りまとめ/進行管理なども担当していたりします。

20230313_mm_04.png▲佐藤さんが普段テストプレイで使用しているキャラクター。『「YoRHa: Dark Apocalypse」の担当PMをしていたので、報酬防具を着せてみました!』とのこと。

永井:私は2016年4月に新卒としてスクウェア・エニックスに入社してFFXIVのPMチームに配属され、それ以来ずっとFFXIVのPMをしているので今は7年目になります。入社して最初の担当はUI班で、以降イベント班、ライブ班などのセクションやローカライズチームの担当を経て、現在はバトルシステム/ゲームコンテンツの開発進行を主に担当しています。佐藤さんと同じく、そのほかにレーティング提出やプラットフォーム関連などこまごまとした業務も担当しています。

20230313_mm_05.png▲同じく、永井さんが使用しているキャラクター。普段のメインジョブは戦士とのこと!

みやみや:進行管理の業務では、グラフィックス系とバトル系とそれぞれ専任で担当しているのですね。 パッチ6.3では、具体的にどんなお仕事をしていたのでしょうか。

永井: まず、パッチ6.3に限った話ではなくメジャーパッチの開発という全体的な話になりますが、パッチの開発初期~中期は担当のバトルシステム班/ゲームコンテンツ班の開発が問題なく進んでいるかの確認をして、何か問題があれば関係者と相談して対応する、というのを繰り返していきます。そしてパッチ開発後期になると、「PDチェック」と呼ばれる"吉田P/Dをふくめたコンテンツのチェック"が始まります。
「PDチェック」にあたり、コンテンツごとにチェックの所要時間やチェック可能な状態に仕上がる日程などを確認し、スケジュールを立てていくのもPMの仕事です。

また、パッチ6.3の場合はアライアンスレイドが入るパッチでしたので、24人での「バランス調整テスト」も複数回実施しました。PDチェックもバランス調整テストも、平均的なプレイヤースキルの、さらにできれば全員初見でプレイしてもらいたいので、開発チーム内で該当コンテンツを触っていないスタッフを多く集めなければなりません。この規模での人選やスケジュール調整は、意外と大変な作業です。

20230313_mm_06.png▲テストプレイには宣伝チームのメンバーが参加することも。その日はオフィスに悲鳴のような声が響き渡ります。

みやみや:今回は24人でのアライアンスレイドでしたが、例えば大規模フィールドコンテンツともなると72人、144人......とまたとんでもない規模感になりますね......! 佐藤さんはいかがでしょうか?

佐藤:グラフィックス系については、セクションにもよりますが、アップデートに向けた本格的な作業が他に比べると早めにスタートすることが多いです。パッチ6.3を例に挙げますと、パッチ6.2以前の段階でパッチ6.3で使用するキャラモデルやBGは前もって発注されており、まずはモックアップ(仮で作ったサンプル)でこれらの方向性チェックが行われます。その後は永井さん同様、発注から納品までの進捗管理を行っていきます。コンテンツのチェックが始まる時期が近づきますと、グラフィックスに関する修正フィードバックが各所から上がるので、都度調整ポイントを整理したり修正方法を相談したりして、完成までのフォローを行います。

また現在はパッチ作業と並行して、7.0に向けたグラフィックスアップデートの作業もしています。サンプルの作成や開発環境に必要な機能拡充などを行い、アップデートの方向性に問題がないか関係各所に確認する......という作業を、パッチの進行と並行できるように作業時間の確保をしています。


▲「暁月のフィナーレ」発売後の第68回FFXIVプロデューサーレターLIVEにて発表された、次期拡張に向けてのグラフィックスアップデート。

みやみや:現在担当されているセクションは、どのような雰囲気ですか?お二人が担当セクションから刺激を受けていることなどがあれば教えてください。

佐藤:グラフィックス系のセクションはどこよりも温和な雰囲気がありますが、自分たちの成果物に妥協しないプロ意識をとても強く感じています。大きく分けてモックアップと完成相当状態の二段階で関係者によるチェックが入りますが、モックアップの時点ですでに十分な仕上がりに見える状態であったとしても、彼らがそのまま完成にすることはありません。時間の許す限り細部まで詰め、少しでも品質を高められるよう模索し続けています。そんな姿勢に自分も非常に刺激を受け、必要に応じて他セクションにあらかじめ相談するなどして、少しでもグラフィックスのブラッシュアップに費やせる時間を確保できるように対応する......など可能な限りサポートをしています。

永井:バトル系の皆さんはゲームが本当に好きで、たくさんゲームをプレイしている人ばかりです。忙しい中でも新作のゲームや話題の映画にきちんと触れていて、「あの演出どう思いました?」など皆さんが感想をやり取りしているのをよく見かけます。インプットを続けることで、アウトプットに繋げているのだな、と日々感じています。

コンテンツの企画は、どうしても「これだけ時間をかけたら絶対におもしろいものができる」というわけではありません。毎回とても大変そうなのですが、それでもきちんと決められたスケジュールに間に合わせ、かつ新鮮な企画を作り上げています。そんな皆さんのクリエイターとしてのプロ意識を尊敬しています。

みやみや: PMのお仕事をする中でやりがいを感じる瞬間はどのような時ですか?

永井:パッチをリリースした後、自分が携わったコンテンツをプレイされた方の感想をフォーラムやSNSで拝見する瞬間です。

PMという職種柄、普段はトラブルの解決というかマイナスをゼロにするための仕事が多いのですが、だからこそ自分が携わったコンテンツを楽しんだり喜んだりしてもらえている様子を見るのが自分の仕事もゲームを作る一端なのだと思える機会になっています。

UI班担当の頃、開発ブログで定期的にUIアップデートの紹介記事を書いていました。自分が直接何かを作っているわけではないですが、担当としてUI班の細かなアップデート情報もプレイヤーの皆さんに届く機会を少しでも増やしたい、という気持ちがあったからです。そんなブログの内容に対して、「こんな機能がほしかった!」「痒い所に手が届く!」と言ってもらえるのは嬉しかったです。FFXIVのプレイヤーの方々は、パッチノート公開時なども細かなアップデートにも着目してくださるので、いつも励まされています。

20230313_mm_07.pngドマ式麻雀が追加されるタイミングHUDレイアウトの詳細設定が可能になった際など、「プロジェクトマネージャーU」として記事を執筆。

佐藤:自分ももちろん、出来上がったものに対するプレイヤーの方々からの反響は励みにしています。それから、開発過程で何か問題が生じたときに、理想的な解決提案ができた瞬間には、すごくやりがいを感じます。

開発中に問題が発生した際は、すぐに主だって関係する方々と連携を取り、専用のチャットチャンネルを設置したり、直接話し合いの時間を作ったりなどして、問題解決を図っています。関わる人数が多い分、コミュニケーションに齟齬が出ないようPMもフォローし、見落としのないよう丁寧に、かつ常に気を張り詰めて、「おそらく大丈夫」といった曖昧な状態では進めないように......と心掛けています。

みやみや:PMだけではなく、どんな業務においても大切な視点ですね。 開発チームとの関わりの深さが分かったところで、これまで開発中に経験した変わった出来事などがあれば伺わせてください。

永井:パッチ5.35で「セイブ・ザ・クイーン」の一要素として、各キャラクターのプロフィールを紹介する読み物「戦果記録帳」を追加しました。「アギー・グローヴァー」という17歳の女の子の戦果記録に記載する好物について、松野泰己さんや関係者と「セイブ・ザ・クイーン」の担当PMである私もふくめたちょっとした相談の機会がありました。しかし全員、これくらいの歳の子との関わりがなかったため、流行りのスイーツもいまひとつイメージに合わず......(笑)。最終的にはアギーちゃんの出身地域のもので、世界設定的にも違和感のない「ゼフィール」というお菓子になりました。

20230313_mm_08.png▲中央がアギー・グローヴァー、通称"熱拳のアギー"。

みやみや:そんな経緯で検討された好物だったとは......!時にはPMもアイデア出しに参加されることがあるのですね。 佐藤さんはいかがでしょうか?

佐藤:パッチ5.5で追加した『希望ノ砲台:「塔」』のラストステージの制作のお話です。開発担当者から「街の中にボスを出現させ、電車やビルを飛ばす」という企画があがったので、『NieR』シリーズ的にも問題ないかを確認しました。その際、ご了承いただくとともに「ビルを飛ばすなら、スクエニのビルを飛ばして壊すなんていうのはどうですか?」というアイデアをいただき、FFXIV開発としても「会社が許すならOK」となったので、この"会社がどこまで許せるか"の部分を自分が確認することになりました。

20230313_mm_09.png▲『希望ノ砲台:「塔」』ラストステージ後半。辺りにはビルが並び、不吉な信号も......。

社内広報の方に「こういう企画を進めたいのですが、スクエニロゴが付いたビルを飛ばして壊してしまってもいいですか?」「ロゴは用いずシンプルな社名が書かれたビルであれば、壊すのは問題ないですか?」などと許容ラインを確認していると、何回かやり取りしているうちに「何でそんなに社名付きのビルを壊したいんですか?」と突っ込まれてしまって......。自分が社内で一時期、「会社をクラッシュしたい人」みたいなイメージになってしまい、恥ずかしかったです......。

最終的にどんな表現となったのかについては......未プレイの方もいらっしゃるかと思いますので、ぜひあらためてプレイしてご確認いただけると嬉しいです。

みやみや:ここだけの貴重なお話を、ありがとうございます......! では最後に、プレイヤーの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

佐藤:いつもFFXIVをプレイしていただき、本当にありがとうございます。皆さんからの反響はいつも拝見していて、大変励みになっておりますし、様々なフィードバックを受けて、自分や担当セクションの業務を見直すきっかけにもしています。これからも皆さんに喜んでいただけるクオリティを担保しつつ、安定した環境でプレイいただけるように開発進行を支えていきたいと思います。

永井:FFXIVは本当にたくさんの方々に遊んでいただいていて、そんなコンテンツに自分が携わっていることが信じられない、と今でも日々感じています。自分もいちプレイヤーとしてとても楽しんで遊んでいますし、これからも微力ながら開発チームの一員として頑張っていきたいと思いますので、今後ともFFXIVを楽しんでいただけたら嬉しいです!

***************

FFXIVにおけるPMとは、開発現場が安心して作業を進めるため、そして定期的なアップデートを続けるために必要不可欠な存在であることが分かりました。
今回は一つのセクションにフォーカスする形ではなく、一歩引いた視点からの開発のお話をお届けしましたが、いかがでしたでしょうか?
ではまたお会いしましょう!

みやみや(宣伝チーム)

  

★FF14バックステージ調査隊バックナンバー★

第1回:世界設定/メインシナリオライター:織田万里さん

第2回:リードレベルデザイナー:高橋新さん

第3回:WEBディレクター:高地浩之さん

第4回:UIアーティスト:関洋一さん

第5回:コンセプトアーティスト:長嶺裕幸さん

第6回:コミュニティチーム:加藤岳志さん

第7回:リードテクニカルアーティスト:岡久達哉さん

第8回:VFXアーティスト:石井隆康さん

第9回:ローカライズチーム 前編 後編

第10回:キャラクターコンセプトアーティスト:塚本哲さん

第11回:リードアイテムデザイナー:林洋介さん

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